空気中に浮遊するカビの胞子、排気ガス中に含まれるPM2.5等の微粒子、ハウスダストなどは、様々な病気の原因となる。本研究は、加熱された金属酸化物薄膜表面で、上記の有機系微粒子が接触燃焼することに伴い、そのサイズや種類に依存して薄膜の電気伝導が変化するという新規な検出原理を利用して、有機系浮遊微粒子をリアルタイムで検出するセンサのプロトタイプを開発し、開発したセンサによる検出実験を行った。 開発したセンサは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems;微小電気機械システム)技術および薄膜技術を用いた低電力消費のセンサと、基本特性の研究に使用する薄膜型センサの2種類である。MEMS技術を用いたセンサについては、ダイヤフラムの作製法として、ウェットプロセスを使用したセンサ以外に、センサの微小化と製造時間の短縮化に適したドライプロセスを使用したセンサも開発した。 MEMS型センサを用い、ディーゼルエンジンから排出された微粒子DPM(Diesel Particulate Matter)およびハウスダストによる検出実験を行った。その結果、検出された微粒子の大きさに対応した電気伝導の変化幅、立上り時間、立下がり時間が観測されるだけでなく、DPMの外殻部に含まれる硫酸塩および硝酸塩や、ハウスダストに含まれるダニの死骸に対して、電気抵抗値が低下する前か後に一旦上昇する特異な応答パターンが得られた。これらのデータから、花粉やカビの胞子との識別が可能であることが明らかになった。識別のための電子回路・ソフトウェアの開発も行った。また、薄膜型センサを用い、各種の有機系浮遊微粒子に対する応答を調べた結果、検知膜として使用してきた酸化第二錫ではなく、酸化亜鉛を使用すると、各種の妨害ガスに対する感度が低いため、有機系浮遊微粒子に対する選択性が向上することが明らかになった。
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