植物や茸工場の人工栽培での至適生育環境調節技術において、本研究では栽培種「生き物」から誘発する微弱な生体電位を常時観測する。生体電位の意味解読で「生き物」の気持ちを知り、至適生育環境を人工的に制御する画期的な技術開発を行う。植物や茸などの「生き物」に外的刺激を与えた場合の生体電位応答特性をこれまで数千株のサンプルから収集し、生育と電位変化の因果関係を調査して「生き物」の気持ちを推定可能としてきた。いわゆる「逆問題」としてのアップローチである。食物類の高効率生産や健康食品として注目されているマイタケとわさびを対象とした機能性成分増強型を目指した植物・茸工場の環境制御技術の実用化研究である。すなわち、これまでの蓄積ノウハウを活かし植物工場や茸工場の栽培環境制御を行うSPA(Speaking Plant Approach) やSMA(Speaking Mushroom Approach) システムの新提案を行っている。SPAは従来、植物体の生体計測(生長計測、形態形成、光合成速度、クロロフィル蛍光など)に基づき環境調節することが主体で、一定の成果を得て実用化されつつある。本研究では、この他に生体電位計測のパラメータも含め更に高効率環境制御システムを提案している。地域連携と町おこしを狙った、わさび栽培環境制御システムに提案型SPAを研究室内で試験運用してきた。最終年度では、提案型SPAシステムでの生育実験を地元企業と連携しながらテストランを繰り返した。ちなみに本システムでは、わさび苗から出荷できる芋(通常は根と呼ばれる)部分は、約6ヶ月で通常の露地栽培に比べて約4倍の成長であった。その期間に生体電位を精度を高めて収集・分析を繰り返した。また、試作したMRI装置を用いて、食品の成分分析をT1およびT2緩和時間で評価した。これにより食品の熟度診断方法の基礎の確立もできた。
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