研究課題/領域番号 |
16K06405
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
内田 武吉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 分析計測標準研究部門, 主任研究員 (70455434)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波 / キャビテーション / キャビテーションセンサ / 高調波 / 分調波 / 広帯域雑音 |
研究実績の概要 |
本研究は、高出力超音波に付随して発生する気泡の信号のみを用いて、気泡の運動状態を制御することを目的としている。水に超音波を照射すると気泡が発生する。気泡は、照射超音波の出力の増加に伴い、発生、膨張収縮するstable状態、気泡自体が大きく動くinertial状態、気泡が破裂する圧壊の段階に分かれる。理論的には異なる状態の気泡からは異なる信号が発生している。我々は、気泡由来の信号をキャビテーションセンサで測定し、気泡の運動状態を制御できないか検討している。28年度は以下の検討を行った。 1.超音波照射装置及びキャビテーションセンサの製作→共振周波数1MHzのPZTを用いて円筒形水槽を製作した。PZTは円形で直径は20mmとして、直径100mmの水槽の底部に設置した。超音波は水槽底部から水面に向かって照射され、局所的に定在波音場が形成される。またPZTのサイズに合うように、内径を30mmにした新しい円筒形キャビテーションセンサを製作した。 2.水槽内の音圧測定→高音圧対応のハイドロホンを用いて、PZTへの印加電圧に対する水槽内の音圧を測定し、振動子への印加電圧と音圧の関係を明らかにした。今後は測定した結果を元にして水槽内の音圧を制御する予定である。 3.キャビテーションセンサによる分調波と広帯域雑音の測定→水槽内の音圧を増加させた時の気泡由来の信号である分調波と広帯域雑音の変化をキャビテーションセンサを用いて測定した。その結果、分調波と広帯域雑音は異なる音圧で発生することを確認した。音圧を増加させると、最初に広帯域雑音が発生し、その後分調波が発生することが確認できた。これは、気泡が発生する瞬間は広帯域雑音が発生し、気泡が膨張収縮するときは分調波が発生している可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の達成度は、28年度に行った1.超音波照射装置及びキャビテーションセンサの製作、2.水槽内の音圧測定、3.キャビテーションセンサによる分調波と広帯域雑音の測定の成果により、おおむね順調に進行していると考えられる。28年度基盤研究(C)研究計画調書や28年度交付申請書に記述した28年度に行う研究計画をほぼ達成している。しかし、研究計画では気泡の状態をstable状態、inertial状態、圧壊の3つに分けていたが、その後の考察により気泡の発生、stable状態、inertail状態、圧壊の4つに分けることが必要であることを確認した。そのため、今後1/2分調波だけでなく2/3分調波も測定する必要が生じたため、29年度に検討予定である。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、水槽内に発生させた気泡を高速度ビデオカメラで観察する予定である。超音波造影剤であるマイクロバブルを使用して、水槽内の音圧を制御することにより、マイクロバブルの運動状態を制御し、その時の挙動をビデオカメラで観察する予定である。観察結果と28年度に測定した水槽内の音圧と気泡由来の信号の関係を用いて、信号と気泡の挙動の関係を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
キャビテーションセンサは、気泡により発生する衝撃波により徐々に損傷するため、信号が小さくなった場合、新たに製作する必要が生じるが、予定していたより実験が順調に進んだため、キャビテーションセンサの製作台数が少なくてすんだ。また、超音波照射装置は、29年度に行う高速度ビデオカメラによる撮影を考慮して、当初予定していたよりコンパクトに設計・製作した。上記の理由により繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度は、高速度ビデオカメラをレンタルし、水槽内の気泡の挙動を観察する予定である。高速度ビデオカメラによる観察は、気泡の発生領域が大まかにしか特定できないため、時間がかかる予定である。そのため、28年度からの繰越金は、高速度ビデオカメラのレンタル料金に加える。予定していたより長期間のレンタルを行い、より正確な気泡の挙動観察に反映させる予定である。
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