研究課題/領域番号 |
16K06406
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
菅野 敦史 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (20400707)
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研究分担者 |
川西 哲也 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40359063)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 周波数コム / 光周波数コム / 測距 |
研究実績の概要 |
光周波数コムを用いた測距技術の原理検証を行うため、光変調技術を用いた光周波数コム光源を構築した。10GHz程度のRF入力によりレーザ光を変調することで高次高調波を生成し、周波数帯域としておよそ100GHz程度の光周波数コム信号を得た。その際、入力する信号としてレーダ等で用いられるFM-CW信号を入力することで、各高調波次数分だけ周波数が逓倍された多波長FM-CW信号の生成が可能となる。本課題では、入力周波数として9.6-10.56GHzのノコギリ波状FM-CW信号(信号周期15μs)を入力することで、1次側波帯では9.6-10.56GHzの変調成分が、2次側波帯には19.2-21.12GHz、3次側波帯には28.8-31.18GHz成分が発現することが確認された。これらのFM-CW変調光周波数コム信号から+1次から+4次までの側波帯成分を光バンドパスフィルタを用いて一括で取り出し、光周波数リフレクトメトリの要領で複数の異なる条長を有する光ファイバを光ホモダイン系にて計測したところ、+1次から+4次までのFM-CW信号で異なる中間周波数帯信号が得られ、それぞれの周波数は理論で求められる測長距離にほぼ一致した。その誤差はおよそ0.02%程度であることが示され、光周波数コム光源をもちいたFM-CW測長により高精度な光測距が可能であることが示された。 また光周波数コム光源から±n次成分のみを光フィルタにてとりだし、高速光検出器によるヘテロダイン手法を用いることで離調した周波数に対応する電磁波を取り出すことができる。そこで、光周波数コム信号から高次成分(12.5GHz駆動時にたとえば±12次成分)を取り出すことで、300GHzテラヘルツ帯におけるFM-CW信号の生成にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画として挙げた、光周波数コム信号の生成とそれを用いた光周波数リフレクトメトリによる測距技術の原理検証と、ファイバ長の精密計測に成功したと言えるため。また、複数次数の一括計測も行い、隣接成分の検出およびその周波数遷移の計測を行い、それぞれの成分の計測誤差がほぼ想定内に収まったため、高精度化への目処がみえたといえる。 また、平成29年度に実施予定であった電波領域への変換を先取り実施を行い、FM-CWレーダそのものの原理検証を達成した。 しかしながら、多頭式測距方式における散乱影響・直接信号による干渉の影響については、現在シミュレーションモデルの構築中であり、次年度には数値検討と干渉低減方式の検討が可能となると考えている。 よって、全体としての研究進捗はおおむね順調に推移していると結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は光周波数コム信号のさらなる高精度化と広帯域化を目指し、300GHz幅を安定的に発生可能な周波数コム信号の生成技術の研究を行う。また、その信号を高速光検出器に導入することで、電波領域における周波数コム信号の生成を行い、その信号を用いた電波領域での測距技術の研究も行う。 光領域での測距においては、コモンモード雑音の影響が最終的な信号帯雑音電力比に直結するため、光差動入力方式の採用とそれによる測距の高精度化を両立させた原理の実証を行う。 電波領域の周波数コム信号は周波数コム信号本数として原理検証が可能な3本を目標とし、得られたFM-CWコム信号のそれぞれの成分による測距と隣接する成分間での影響を検証することで、FM-CW方式電波周波数コム測距の方式の実証を行う。 また、多頭式測距方式を用いた際の他方からの散乱・直接波入力による相互干渉を低減させるため、周波数遷移幅等を変化させた場合の影響の有無を数値検討し、干渉低減方式の有効性の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたレーザ光源等(外国製品)が若干の円高および単価値下げにより安価となったため、次年度への旅費および物品購入費として充当することが妥当と判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内研究会・学会等の発表に伴う旅費・学会参加費、および、当初計画を上回る成果が得られたテラヘルツ波信号発生技術のさらなる発展を行うための消耗品(光ファイバ部材)の購入に充当する。
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