レーダ等で用いられるFM-CW方式を光変調器駆動型光周波数コム発生器へ接続し、コヒーレントライダー方式を用いた光領域測距技術の実現にむけた研究を実施した。本年度は、マッハツェンダ干渉計型光強度変調器を過変調動作させることで、高次変調成分を発生させ、その複数の成分を用いて測距を行う際の信号処理手法について、平成29年度に実施したMUSIC法による周波数同定および距離計測だけでなく、主成分分析PCAを用いた方法も検討した。PCAでは光周波数コム信号を伝搬させる光ファイバ長とFM-CWコヒーレントライダー計測で得られる周波数成分に相関は見られなかった。受信信号のSN比が十分でなかったこと、また、用いた信号発生システム固有の問題で不要な複数周波数成分が相関を保ったまま出力されていたためだと考えられる。そのため、信号発生システムとしてDA変換器ベースの任意波形発生器を用いずに、デジタルPLL+VCOをベースとしたものに変更する施策を実施し、後者の信号源でFM-CW受信が実現可能であることを示した。 また、さらなる高精度化のためには光周波数コムを広帯域化することが必要である。そこで、光領域周波数ロックループシステムを構築した。独立駆動する光周波数コム信号へ一方の光周波数コム信号の波長をロックさせることで、あたかも1つの広帯域光周波数コム信号として扱うことができる技術の実証を行った。光周波数コム間の周波数揺動をレーザ線幅と同等の10Hz以下に抑えることができることが示され、測距のための広帯域光周波数コム基盤技術が確立できたと言える。 電波領域の測距では高精度化のためには複数のレーダ装置で相関を取ることが簡便であり、光技術はそれを容易に構成可能である。そこで干渉した場合にFM-CW掃引スロープを変化させることで測距を行いつつも干渉波影響を広帯域雑音として発生する手法と実験的検証を実施した。
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