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2018 年度 実施状況報告書

計算知能援用制御法の開発 -IoT時代の大規模複雑システムへの適用を目指して-

研究課題

研究課題/領域番号 16K06409
研究機関筑波大学

研究代表者

河辺 徹  筑波大学, システム情報系, 教授 (40224844)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード計算知能援用制御 / IoT / 大規模複雑システム / モデル予測制御 / スライディングモード制御 / 機械学習 / V2G
研究実績の概要

昨年度、一昨年度と開発を進めてきたMP-PID法/MP-SMC法の実用化に向けた改良と実システムへの応用に向けた検討を進めた。大規模複雑システムの一例として、電気自動車の蓄電池に蓄積されている電気エネルギーを,次世代電力網であるスマートグリッドに送ることで、電力の需給バランスをとるVehicle-to-Grid(V2G)を対象としてとりあげ、電力の安定供給の制約のもと、Co2排出量の削減を目的として、MP-PIDとMP-SMC法を拡張したアプローチを開発し、その性能検証を行った成果を国際会議にて発表した。
また、一昨年度から進めている自動車の走行データを制御ユニットからクラウドサービスを用いて収集/蓄積し、これを解析することで、運転特性モデルや乗り心地の良い運転特性の定量的評価基準の導出を行う研究において、一昨年度開発した加減速に対する乗り心地の改善を目的とした速度制御法を、直進時だけでなく旋回時にも適用できる2次元の制御法に拡張して実用化を高めた成果を国際委会議で発表するとともに国際学術雑誌にも採録された.また、実車両を用いた走行データに基づいて、ドライバーの運転動作の抽出と縦方向と横方向の2つの加速度の時系列データの特徴量の出現頻度を機械学習によって分析する手法を開発し、その成果を国内会議にて発表した。
さらに、次世代都市交通システム(Advanced Rapid Transit)として、歩車共存空間で用いることを想定している自動運転の電子連結車両の運動制御に対し、ポテンシャル関数を時空間に拡張するとともに障害物の予測軌道を算出するMP法や、鳥の飛行動作のうち着地動作に着目して大量の動画データを解析した結果から構築したモデルと解析結果に基づき抽出した制御則を乗り心地のよい停止制御に応用する方法なども新たに開発し、これらの成果を国内会議にてそれぞれ発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究代表者が2018年4月1日付けで筑波大学情報学群情報メディア創成学類長に就任し、学類運営業務全般に携わっており、これらの業務が多忙となって研究遂行にかける時間が減ったため、補助期間延長を行った。また、V2Gに対する制御手法、ポテンシャル関数を時空間に拡張したMP法、鳥の飛行動作の撮影データに基づくモデル化と制御則の抽出による制御法の構築など新たな対象やアプローチに対する研究開発を開始しており、これらは今後の発展が期待できるテーマであるが、現段階ではまだ途上と言わざるを得ない。これらにより、“やや遅れている”と判断した。

今後の研究の推進方策

2018年度中に新たに取り組みを始めた、V2Gに対する制御手法、ポテンシャル関数を時空間に拡張したMP法、鳥の飛行動作の撮影データに基づくモデル化と制御則の抽出による制御法の構築の3つについて、実用化を目指してロバスト性を高める観点も加えて、それぞれの開発を進める。特に、V2Gに対する制御手法においては、Co2削減以外にも一定期間の総電力消費量の低減化などの目的を加えることや、様々な現実的制約を条件化して加えること、また電力網の規模(人口規模等)とEVの台数割合との関係性の解析、人口規模のスケーラビリティの分析などを行うことで、実用性を高める。この場合、多目的制御系設計問題となるため、これまで開発してきた制御目的を制約変換した単目的問題を逐次的に解く方法により、仕様に応じて適切な解を選択決定する方法の拡張と適用も検討する。
さらに、これまで開発してきたMP-PID法、MP-SMC法とこれら3つのアプローチとの性能比較や組合せも併せて行う。さらに、計算知能を活かした機械学習との組み合わせの相性を分析し、より大規模で複雑なシステムへの適用のための拡張を並行して行いつつ、組み合わせた場合の具体的な有効性の検証を行う。機械学習との組み合わせにおいては、深層学習による補正機能を備えたモデル化手法との組み合わせにより、これらの制御法の設計パラメータと対象特性とのさらなる関係性解析を行うことで、モデル化手法と制御手法を統合した設計手法の構築も目指す。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 2018年度に研究成果発表を予定していた国際会議や国内会議について、学内業務の多忙により参加ができなかったものがいくつかあり、また、研究の進捗がやや遅れたことで、当初想定していたほど研究補助を依頼する必要がほとんど生じなかった。この結果、外国旅費や人件費・謝金の支出が想定より少なかったことが最も大きな要因である。設備備品についても、新規に購入したデータ解析用の専用PCを研究室の既存のサーバと併用することで賄えたことも要因の一つである。
(使用計画) 2019 年度は、鳥の飛行動作の撮影データに基づくモデル化と制御則の抽出による制御法の構築において撮影データの蓄積が必要なため、このための機材や記録メディア、解析用コンピュータの購入、さらには大学院生研究協力者には、これらのデータ収集や整理、データ解析の補助などを行ってもらうために、謝金や参考図書の購入、必要ソフトウェアの購入等について、繰り越し分と合わせて執行する予定である。また、V2Gに対する制御手法、ポテンシャル関数を時空間に拡張したMP法の開発では、実用化を高めるためのシミュレーション検証とデータ解析の研究補助を依頼する。その他、国内外の会議への参加と成果発表、雑誌論文発表等を積極的に進める予定で、これらの経費を含めて全体的な執行を行う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Improvement of Ride Comfort of Turning Electric Vehicle Using Optimal Speed Control2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Zhou, T. Kawabe
    • 雑誌名

      International Journal of Electrical, Electronic and Communication Sciences

      巻: 12 ページ: 541-548

    • DOI

      10.5281/zenodo.1340583

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Incorporating Vehicle-to-Grid into Emission-constrained Dynamic Economic Dispatch with Model Predictive Control2019

    • 著者名/発表者名
      K. Kirihara, I. Aihara, T. Kawabe
    • 学会等名
      IEEE Power and Energy Conference at Illinois
    • 国際学会
  • [学会発表] Improvement of Ride Comfort of Turning Electric Vehicle Using Optimal Speed Control2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Zhou, T. Kawabe
    • 学会等名
      20th International Conference on Robust Control and Variable Structure Control
    • 国際学会
  • [学会発表] シェアドスペースにおける周辺移動物の軌道予測に基づく自律走行パーソナルモビリティの運動制御2018

    • 著者名/発表者名
      平澤敦基,河辺徹,合原一究
    • 学会等名
      第61回 自動制御連合講演会
  • [学会発表] 鳥の着地動作に基づく自動車の速度制御法の構築2018

    • 著者名/発表者名
      彦坂勇向,永崎佑里,合原一究,河辺徹
    • 学会等名
      第61回 自動制御連合講演会
  • [学会発表] 縦加速度と横加速度の時系列データに基づく乗り心地指標を用いた運転特性解析2018

    • 著者名/発表者名
      赤松伸樹,合原一究,河辺徹
    • 学会等名
      第61回 自動制御連合講演会

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公開日: 2019-12-27  

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