本年度は、計算知能援用制御法構築の集大成として主として以下の研究開発を行った。 1.大規模複雑システムの一例であるスマートグリッドを対象に、特にGrid to Vehicle(G2V)、Vehicle-to-Grid(V2G)の観点から、再生可能エネルギー源(RES)と電気自動車(EV)を結んだ電力送電網を想定し、RESの発電量の変動、EVが与える影響、システムの周波数安定性といった複雑な制約を考慮し、CO2排出量を削減し安定かつ耐久性に優れた電力網の構築のために、モデル予測制御(MPC)を基礎とした実用性の高いアプローチを開発し、国際雑誌論文として投稿中である。2.同じく大規模システムである、歩車共存空間での次世代都市交通システム(Advanced Rapid Transit)を対象に、そこで用いられる自動運転のパーソナルモビリティのための運動制御法として、昨年度より開発を進めてきた時空間ポテンシャル法を拡張し、障害物の運動特性や形状も考量した予測軌道を算出し、より柔軟で確実な回避を行うMPCを基礎としたアプローチを開発し、国内雑誌論文として投稿中である。3.特に羽ばたきの少ない鳥の着地動作に着目して、大量の動画データを解析した結果から構築した線形重回帰モデルとこれに基づく最適制御の逆問題の結果を応用(ILQ)した制御則やさらにこれをMPCの枠組みに拡張したアプローチを、人工移動体の乗り心地のよい停止制御に応用する方法なども新たに開発し、国内雑誌論文や国内会議にて発表した。4.昨年度、一昨年度に開発した、大量の実走行データの取得とその解析結果に基づいて構築した運転特性モデルや乗り心地の良い運転特性の定量的評価基準、ならびにそれらを基礎として構築したMP-PIDやMP-SMCに基づくEVの実用的速度制御法の成果を、学術図書(分担執筆)として出版した。
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