研究課題/領域番号 |
16K06411
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
畑中 健志 東京工業大学, 工学院, 准教授 (10452012)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビルエネルギー管理 / 分散最適化 / 受動性 / 実時間制御シミュレータ |
研究実績の概要 |
本申請課題の目的は大きく分けて以下の二つである.(i) 物理ダイナミクスと分散最適化を統一的に扱う手法の構築,(ii) ビルの実時間制御シミュレータの開発. 課題(i)に関しては,下記の項目への取り組みを予定していた.(i-1) 制約条件を含まない分散最適化問題を求解する受動システムの提案,(i-2) 局所制約を含む問題へ拡張,(i-3) ビル群全体の大域制約を含む問題へ拡張.課題(i-1)と(i-2)に関しては,予定通り本年度中に理想的な解の導出に成功し,国際会議論文として一件の発表を行った.また,現在国際学術論文誌に一件の論文を投稿中である.課題(i-3)は,共同研究者に挙げたNa Li教授のもとに8ヶ月間滞在し,助言と議論を元に解の導出に成功した.本成果は現在国際会議論文にまとめ,投稿中である.さらに,(i-4) 物理システムとの結合形態の提案への取り組みについても共同研究を実施し,一定の成果を得た. 課題(ii)に関しては,下記の課題への取り組みを予定していた.(ii-1) 制御ソフトウェアとしてMATLABを想定し,EnergyPlusと連携,(ii-2) SketchUを用いたビルのモデルを作成,(ii-3) EnergyPlusが出力するデータから設計用モデルを構築,(ii-4) 最適化計算ソフトウェアGurobiをMATLABと連携.まず,課題(ii-1)は,当初の予定通りBCVTBを利用することで連携に成功した.課題(ii-2)に関して,SketchUpの使用法を習得し,実際のビルのモデルを作成,EnergyPlusへの取り込みに成功した.その後,ビル内の温度推移をシミュレートし,このデータを用いて,BRCM Toolboxを利用することで設計用簡易モデルを得た.これらの成果を国内会議論にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題(i)に関しては,当初予定した課題(i-1), (i-2), (i-3)の解決に成功したことに加え,ハーバード大滞在の機会を得ることができたこともあり,当初は次年度以降に予定した課題(i-4)への取り組みを開始することができ,一定の成果を得ることができた.逆に,申請者が不在としたことで課題(ii)の進捗の遅れが懸念されたが,事前のソフトウェア群の選定が適切であり,当初想定していたうまくいかなかった場合の対応を必要としなかったため,おおよそ予定したスケジュール通りに作業を進行することができた.ただし,不在の影響で最適化ソフトウェアGurobiの購入が進まず,課題(ii-4)は次年度の課題に持ち越すこととした. 以上を総合的に評価して,ほとんどの論文が投稿中であり具体的な成果として形には残っていないものの,本課題研究は予想以上に順調に進行していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
課題(i)に関しては,本年度に導出した(i-4)の成果を拡張し,そこで要求されるいくつかの仮定の緩和を試みることで,より汎用性の高いソリューションを導く.同時に,問題を解くために必要となる問題の構造も明らかにしていく.さらに,メリーランド大学のNikhil Chopra教授の助力を得つつ,(i-5) 外乱や通信遅れに対するロバスト性の強化にも取り組む.本年度の成果によって,分散最適化のプロセスが受動システムと捉えられることがわかったため,受動性に関するこれまでの研究蓄積を援用することで課題解決を目指す. 課題(ii)に関しては,早々に必要物品の購入を済ませ,まずは本年度取り組むことができなかった(ii-4)のシステムを完成させる.これには,工学院大学の向井正和准教授の助言を仰ぐ.次に,本年度提案した実時間制御・最適化アルゴリズムを,これも本年度作成したシミュレータ上に実装し,効果を検証する.さらに,(i-3)の解法を実装するために,現状よりも大規模なビル群のモデルをシミュレータ上に作成する.これは,本年度の成果の繰り返しであるため,大学院生の補助を仰げば早期に達成できると考えられる. 最後に,本年度の成果を学会発表や雑誌論文の形で広報することも本年度の課題である.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度のほとんどの時期を米国ハーバード大に滞在することになったことにより,所属大学に設置予定の物品を購入できなかったため.また,渡航支援制度の規則により,旅費を本科研費予算から支出できず,また参加予定であった国際会議の一つが滞在先の都市での開催であったため,旅費自体が不要になったため.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に関しては,本年度購入予定だったものを次年度改めて購入する予定である.旅費に関しては,現在二つの国際会議に論文を投稿しているため,それらに参加することによって本年度計上した旅費を使用する予定である.
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