研究課題/領域番号 |
16K06413
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
岩崎 誠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10232662)
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研究分担者 |
関 健太 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432292)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メカトロニクス / モーションコントロール |
研究実績の概要 |
平成28年度では,減速機(ここでは波動歯車装置)と駆動用モータを一体化したアクチュエータに,負荷側エンコーダおよびエンコーダ信号回路を内蔵した供試装置を設計・試作した。減速機出力軸に加速ピックアップ,歪ゲージを設置した負荷側状態量センシングの例は既に各種報告されており,負荷軸回転角を中空軸にシャフトを通してモータ側に伝達し,モータ側に負荷側エンコーダを設置した試みも文献にて紹介されている。しかし,シャフトが中空軸を占有したり,そのねじれ剛性によるセンサ信号への共振特性重畳といった影響が,高速・高精度位置決め制御性能を劣化させることも懸念される。そこで,提案設計では,負荷治具に直接エンコーダスケールを設置し,その信号ラインをアクチュエータ筐体を通してモータ側に接続することで,従来構造と同様に中空軸を占有せず信号への共振影響も排除可能とした。さらに,エンコーダ信号処理回路には,レゾルバの逓倍回路を応用した高分解能化回路を設計し,FPGAによるロジック回路として実現した。 平成28年度に試作した供試アクチュエータに産業用ロボットのアーム軸を想定したアーム負荷を設置し,負荷状態量を含めた状態FB併用型フルクローズド2自由度位置決め制御系を設計した。そこでは,機構共振振動および減速機に内在する角度伝達誤差に起因する振動抑制を目的に,1)共振振動抑制と負荷位置追従特性に着目した既約分解表現に基づくFF補償器と,2)角度伝達誤差による機構振動抑制とパラメータ変動に対するロバスト性能に着目した状態FBおよびFB補償器を,それぞれ設計した。状態FBの設計では,FBループ感度に着目し,所望の振動抑制を陽に満足する極配置および周波数整形を行った。そして,提案2自由度制御による高速・高精度位置決め制御系の実機有効性検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の平成28年度研究計画・方法に従って,減速機負荷側センサ設置と信号処理回路の設計および供試アクチュエータ試作,およびフルクローズド2自由度制御系の設計と実機検証が順調に実施され,実機検証によって制御目標・仕様を満足することで提案手法の有効性を示すことができた。これら一連の設計論と実験検証に対して,以降に示す学術論文や学会口頭発表により,その成果を公表した。 さらに,平成29年度の研究計画に挙げられている,パラメータ変動に対するロバスト位置決め補償器設計への展開に関しても,制御系CADベースの数値シミュレーションによって,設計論の基礎検討を年度前倒しで実施している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には,パラメータ変動に対するロバスト位置決め制御系の実機検証および減速機の非線形要素を考慮したFF/FB補償器連成設計への応用展開を行う。 具体的には,平成28年度で提示した2自由度制御系設計手法のロバスト制御性能検証として,供試位置決め装置を研究室現有の恒温恒湿ルーム(平成16~17年度基盤研究A,課題番号:16206043で整備)に設置し,ルーム内の温度設定を可変することで実機パラメータを直接変動させ,ロバスト位置決め制御性能評価を実施する。そこでは,プラント摂動から出力までの感度特性を最適化指標としてLMIで制約条件として定式化し,最適化問題を解くことで状態FB補償器設計とし,所望の位置決め精度を満足するロバスト制御性能を実現する。 さらに,上記ロバスト制御性能の更なる向上を目指し,減速機に内在する非線形特性をアクチュエータ出力に対する制約条件として不等式表現し,さらにFFおよびFB補償器の係数ベクトルに関する二次形式評価指標を併せて連立してAffine関数によるLMIで表現することで,FF/FB補償器の連成設計に対する最適化評価指標の定式化とする。その場合,従来法であるSchur ComplementによるLMIの変換と線形最適化手法の枠組みをそのまま適用できないため,非線形計画問題で用いられている逐次二次計画法を最適化アルゴリズムとして導入し,定式化された非線形な評価関数を最小化するFF/FBフリーパラメータベクトルの算出へと設計論を拡張する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた設備備品(スペクトルサーボアナライザ)の性能(解析周波数分解能)を低下させた結果,価格が予定よりも下がったため,次年度繰越額が発生したため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度繰越額と当初配分額を合算し,平成28年度に購入しなかった制御用コンピュータを購入予定である。
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