本研究では,強安定率を常に高い値に維持し続ける制御系(以下,スマート強安定系と呼ぶ)の構成法を開発することが目的である.そこで,本年度は昨年度に引き続き強安定系の構成に関する研究を行った.具体的には,平成29年度以降の計画に従い,スマート強安定系の構成や状態空間法による構成法,さらに理論的発展を目指し,モデルベースドな制御手法において,強安定系を構成する設計パラメータを多項式とした場合を中心に検討した.制御法としては,一般化最小分散制御法ならびに一般化予測制御法を対象とした.一般化最小分散制御法に関しては,設計多項式を付加した新しい一般化出力に基づく制御系設計法を開発し,強安定率を決定するパラメータを含んだ補償器を逐次更新していくスマート強安定系の構成法を提案した.また,スマート強安定系の多入力多出力系への拡張を目指し,状態空間法による一般化最小分散制御法について検討を行った.さらに,提案法をPID制御に応用する手法について検討した.本研究課題で開発した制御手法について,スマートインデックスという新しい評価指標は,従来の制御性能に関する指標として一般化出力が相当し,新しく導入した設計多項式に関する項が強安定率を決定する項に相当する.したがって,本研究の目的は一定程度果たすことができた.引き続き,非線形系に対しても提案法が構成できるような検討を行う.また,一般化予測制御法に関しては,これまでは従来法の制御則に新しい制御信号を付加することで制御則を直接拡張する手法を提案してきたが,本研究課題で得られたスマートインデックスに関する知見をもとに新しい予測式を開発し,制御系が拡張できることを示した.拡張された制御系の特徴は,閉ループ特性を変えずに制御則または雑音特性を調整できるというものであり,今後も詳細な検討が必要である.これらの成果については,国内の会議等で報告を行った.
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