研究課題/領域番号 |
16K06422
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
森 泰親 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (00210138)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 制御システム / 車両自動運転 / 自動駐車システム / 自動車間制御 / スライディングモード制御 |
研究実績の概要 |
アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)は、運転負荷軽減のための車間制御システムである。このシステムの目的は、先行車と自車間の距離を一定に保つことであるが、先行車追従中に他車が割り込んでくると、追従目標値が突然に変更され、乗り心地が悪化するという課題がある。そこで、本年度は、車間制御方式の改良に注力した。 本研究課題の代表者が提案した、様々な形の非線形切換え面を用いたスライディングモード制御の性能を検証した結果、楕円切換え面がもっとも車間制御に適していることが判明した。楕円切換え面を用いると、到達モードが発生しないことから、ロバスト性が高く、しかもエネルギー消費量を低減できる。しかしながら、楕円は閉曲線であるため、平衡点付近で摂動を受けると平衡点に留まらず再び楕円上を周回することがある。 そこで、状態が平衡点近傍にきたとき、線形切換え面に状態を拘束することで上記の課題を解決した。具体的には、楕円の接線を線形切換え面に見立てて拘束し、その後、その線形切換え面が原点(平衡点)を含む様に、状態を拘束したまま線形切換え面を平行移動する手法である。 新しく考案した上記提案手法を車間制御に適用した。自車が一定速度の先行車に一定の車間距離を保って追従走行しているとき、他車が異なる一定速度で割り込んできた場合を想定した。このとき、車間距離は突然狭くなるため車間距離調整をしなくてはならない。しかも、割り込んできた車両の速度に揃えなくてはならない。提案手法を適用することで、乗り心地とエネルギー消費量を考慮しつつ、安全に、かつ、速やかに所望の定常状態にまで遷移できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、超低速域における車両自動運転の一例として切り返しを伴う自動並列駐車を取り上げ、路面勾配や段差に対してロバストな自動駐車システムを構築した。また、平成29年度は、70km/h走行の先行車を追従中に65km/h走行の他車が突然割り込んでくる場合を想定したACCにおいて、楕円と直線の組み合わせによる切換え面を提案し、その切換え面を用いたスライディングモード制御の有効性を示した。 しかしながら、Carsimを用たフルビークルモデルシミュレーションによる、自動並列駐車位置決め制御の実効性および中・高速域における車間制御の有効性検証は十分ではない。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度と平成29年度における研究成果は、MATLAB とSimulink を用いてのシミュレーションであり、部分的に線形化した簡易モデルを用いている。この簡易モデルシミュレーションで十分であると認められる場合が殆どであるものの、本研究課題では、Carsimを用たフルビークルモデルシミュレーションを通して、これまでに提案してきた手法の実用性、有効性の検証を行う。 Carsimは、車両の動特性を忠実に実現したシミュレーターであるので、Carsimを用たフルビークルモデルシミュレーションは、実車による試験とほぼ同等であると見なされている。スライディングモード制御が本来有しているロバスト性をさらに強化した上で乗り心地とエネルギー消費量も考慮した本提案手法を多角的に検証する。
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