研究課題/領域番号 |
16K06431
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
村尾 俊幸 金沢工業大学, 工学部, 講師 (00447038)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 制御工学 / 電動大腿義足 / 二関節筋 / 機械力学・制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,電動大腿義足などに代表される大腿部に対する電動義肢装具に対して,二関節筋構造を考慮した制御手法を提案することを目的としている. はじめに,二関節筋を考慮した下肢の歩行モデルの構築を目指して,まず二関節筋を有する下肢モデルを数学的に導出した.モデリングは,二関節筋アームのマニピュレータダイナミクスをオイラー・ラグランジュシステムとして捉えることで行った.なお二関節筋とは,人間が上肢と下肢に有している,二つの関節にまたがって動作することで両関節に同時に作用する特徴を持つ筋肉のことであり,二関節筋を考慮した下肢モデルは通常のマニピュレータダイナミクスに基づくものとは異なるモデルとなる. また,二関節筋を取り入れた電動大腿義足の試作機を製作した.製作したものは内側広筋,大腿二頭筋(短頭),前頸骨筋,ヒラメ筋の一つの関節のみを動かす四つの一関節筋と腓腹筋の機能を模した膝と足首の両方の関節に影響を与える一つの二関節筋の計五つの動力を持った電動大腿義足となっている.一関節筋と二関節筋の両方で同じ関節を動かすために,関節部分をベルトで接続し,ベルトを巻き取ることで関節を収縮させる構造とした.電動大腿義足を横向きに置いた検証実験では,二関節筋を併用した場合において,一関節筋のみを動作させたときよりも動作時間が短くなり,トルクの合成が行われていることを確認した.しかし一部においては,摩擦等の影響により動作時間にほとんど変化が見られないものがあった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では電動大腿義足などに代表される大腿部に対する電動義肢装具に対して,二関節筋構造を考慮した制御手法を提案することに取り組んでいる.当初の計画では,今年度,筋電センサやパルスオキシメータを購入し,計測環境を検討する予定であったが,よりふさわしい実験環境を整えようとセンサの選定に時間をかけているために,今年度中の購入が間に合わず,来年度に購入することにした.また,歩行モデルの導出も若干遅れている.一方で,今年度の計画にはなかった電動大腿義足の試作機の製作を行ったことから,やや遅れていると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討した二関節筋を考慮した下肢モデルを発展させ,歩行モデルを導出する.本研究では人間の運動にとっても自然となる,システム内部でエネルギーが消費されるという受動性という性質を保存する形で二関節筋を考慮した下肢の歩行モデルを表現する. つぎに,歩行モデルを元に二関節筋電動義肢装具のダイナミクスを定式化する.本申請では,片足のみに電動義肢装具を装着する状況設定を考える.歩行運動を考えるときには,電動義肢装具が支持脚となっているときの仮想的なホロノミック拘束を定義する必要がある.圧力の中心位置がかかとからつま先に移動するときの支持脚の幾何学的な動きをもとに,歩行するうえでより自然な電動義肢装具の動きになるようなホロノミック拘束を設定する.そして,そのホロノミック拘束を達成する安定化出力フィードバック制御則を提案する.また,支持脚と遊脚の入れ替わりによりダイナミクスが切り替わることから,歩行運動はハイブリッドシステムとなることが知られている.ハイブリッドシステムのダイナミクスに関するパラメータの最適化を考慮しつつ,歩行運動におけるリミットサイクルが安定となるような制御手法の設計を行う. そして,提案する制御手法を検討するために,制御系設計用のソフトウェアであるMATLABとSimulinkを用いて制御系を設計し, シミュレータを作成する.シミュレーション検証では歩行する環境を平坦な道だけに限定せず,歩行するうえで困難な環境も設定することで,制御手法のロバスト性に関する評価検討も行う. 検証実験では,大腿切断者に最初から協力を依頼して検証実験を行うことが望ましいが,大腿切断者に対する検証実験を何度も行うことは難しい.そこで,設計予定の電動義足と同じ構造を有する電動長下肢装具を製作し,健常者を通じた検証実験をすることを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,今年度,筋電センサやパルスオキシメータを購入し,計測環境を検討する予定であったが,よりふさわしい実験環境を整えようとセンサの選定に時間をかけているために,今年度中の購入が間に合わず,来年度に購入することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
筋電センサやパルスオキシメータとともに電動長下肢装具および電動大腿義足に必要なロボット用部材を購入していく.また成果発表にも使用する.
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