研究課題/領域番号 |
16K06441
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
合田 寛基 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20346860)
|
研究分担者 |
佐川 康貴 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10325508)
原田 耕司 西松建設株式会社(技術研究所), 技術研究所土木技術グループ, 上席研究員 (30544233)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ジオポリマー / ASR抵抗性 / 緻密化 / 曝露試験 |
研究実績の概要 |
環境負荷低減性に優れたジオポリマーは,火力発電所から産出されるフライアッシュならびに製鉄所から産出される高炉スラグ微粉末を使用したクリンカーレスセメントとして注目されている。本研究では,ジオポリマーの緻密化と空隙の関係性評価,反応性骨材を使用した際の膨張に対する抵抗性評価およびはり部材に適用した場合の耐久性について検討を実施した。 ジオポリマーの緻密化評価については,コンクリート製試験体を対象に,同試験体の一部を浸水させて生じる白華(炭酸ナトリウム)をもとに,緻密化と劣化の程度についての関係性を評価した。この結果,特定の範囲の毛細管空隙と白華の発生時期及び量に正の相関がみられることが明らかとなった。この結果により,養生時間の長期化やケイ酸塩系含浸材の塗布による細孔組織の緻密化が,耐久性の向上に効果的であることが示された。同成果は,土木学会西部支部研究発表概要集に掲載された。 ASRに着目した反応性骨材使用時の膨張に対する抵抗性評価については,ポルトランドセメントコンクリートで顕著な膨張を示す骨材を用いて,反応性骨材のペシマムの有無についてAAR3に準じた高温促進膨張試験を実施した。この結果,材齢8週時点では反応性骨材の混入割合が多いほど膨張量が大きい傾向がみられるものの,膨張ひずみはいずれも0.1%未満であることが確認された。 はりの耐久性評価については,ポルトランドセメントコンクリートと同様に蒸気養生で作製したジオポリマーはりを屋外環境に曝露し,外観変状について観察した。セメントコンクリートでは,水セメント比が小さいと緻密で圧縮強度が大きくなり,水分も含めた化学物質抵抗性に優れる傾向がある。一方,ジオポリマーでは,蒸気養生時間が短く圧縮強度が大きい配合のはりと蒸気養生が長く圧縮強度が小さい配合のはりの耐久性を比較した場合,雨水による表面侵食が顕著にみられたのは,前者であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジオポリマーコンクリートの緻密化評価では,φ100×H50mmのシリンダー供試体を用いて,養生時間とケイ酸塩系表面含浸材の有無をパラメータとして,ジオポリマーの細孔空隙を調整し,水道水への一部浸漬試験を実施した。浸漬時の周辺環境温度は,5℃,20℃,40℃の3水準とした。この結果,養生時間の長期化およびケイ酸塩系表面含浸材の塗布によって,試験体の細孔空隙が緻密化され,特に100~1000nmの空隙が大きく減少することが確認された。さらに,浸漬試験中に発生する白華の発生時期および発生が確認された面積と前述の細孔空隙量との間に正の相関が確認された。温度依存性に関しては,5℃で劣化が顕著になることが示された。 反応性骨材使用時の膨張に対する抵抗性評価について,75×75×250mmの角柱試験体を対象に,安山岩系反応性骨材と石灰系比反応性骨材を体積割合で変化させ,AAR3に準じた促進膨張試験を実施した。材齢8週の時点で,いずれの配合でも,0.1%未満の膨張ひずみであることが確認された。この要因として,ポルトランドセメントコンクリートと比較してジオポリマーでは反応性骨材中の反応性鉱物量に対するアルカリ量が圧倒的に多く,顕著に吸水膨張する反応性ゲルが生成されにくいことが影響していると考えられる。一方で少量ながら膨張を呈しており,反応性骨材量が多いほど膨張傾向を示していることから,ペシマムを示さない可能性も考えられる。 はりの耐久性評価では,B200×H300×L2000mmのコンクリートはりを対象に屋外環境に曝露し,外観変化を観察した。パラメータは,長期蒸気養生であるが低圧縮強度のはりと短期蒸気養生であるが高圧縮強度のはりとした。曝露18か月の時点で,いずれのはりでも多少の表層劣化が確認されたが,特に縮合重合反応率が小さいと考えられる短期蒸気養生のはり中央部での劣化が顕著であった。
|
今後の研究の推進方策 |
本テーマについては,現在のところ概ね予定通りに研究が進められていることから,今後も継続して研究計画に則り検討を進める。 緻密化評価については,細孔空隙量と白華の関係をもとに,白華発生までの期間に基づいた劣化予測を試みる。 ASRに関する検討では,ジオポリマーのペシマム評価および,ポルトランドセメントコンクリートで展開されているアルカリと反応性鉱物との関係を参考に,ジオポリマーに反応性骨材を使用した場合の膨張条件の有無についての検討を試みる。膨張条件が存在すると考えられる場合は,アルカリと反応性鉱物に着目した膨張条件と閾値を提示できるよう検討する。 はりなどの実用部材を想定した曝露実験については,所定の期間曝露したはりを対象に,材料学的,構造学的評価を実施し,使用性および安全性に関する検討を試みる。 研究成果については,ジオポリマーが海外でも高い関心を有していることから,アルカリアクティベートマテリアルおよびジオポリマーに関するジャーナルや国際会議で公開する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関して,コアツールセットを購入予定であったが,海外発注品につき年度内に納品が間に合わなかったことから,記載の通り\1,298の差額が生じた. 同差額については,翌年度(最終年度)の直接経費\900,000のうち,\300,000の物品費に加算計上する方針である.
|