研究課題/領域番号 |
16K06455
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研究機関 | 国土技術政策総合研究所 |
研究代表者 |
坪川 将丈 国土技術政策総合研究所, 空港研究部, 空港施設研究室長 (70356054)
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研究分担者 |
河村 直哉 国土技術政策総合研究所, 空港研究部, 主任研究官 (70728211)
伊豆 太 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (30442916)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 空港 / アスファルト舗装 |
研究実績の概要 |
我が国の空港の滑走路は主にアスファルト舗装が使用されているが,舗設後間もない時期に舗装表面近傍のアスファルト混合物である「表層」と「基層」との層間の付着が切れる「層間剥離」が発生することがある.層間剥離がある滑走路を航空機が走行した場合,層間剥離部が突発的に破損する可能性がある.このため空港管理者は夜間の巡回点検において,ハンマーを用いた打音調査や赤外線カメラを用いた熱赤外線調査により層間剥離部を検出し,部分的な補修を実施している.しかし滑走路運用中に突発的な破損が発生した場合,航空機のエンジンが破損変を吸い込むと大事故に繋がることから,当該破損を緊急補修するため滑走路は数時間閉鎖される.本研究では,舗装構造設計において考慮されていなかった航空機走行時の表層-基層間の応力・ひずみ分布と,舗設直後の若材齢時における層間付着強度の経時変化の関係から,若材齢時における層間剥離の発生メカニズムを解明すべく研究を実施する. 平成28年度は,多層弾性解析により層間に発生する応力・ひずみ分布の分析を行った.多層弾性解析では,土木学会舗装工学委員会HPにて公開されている多層弾性解析プログラムGAMESを使用し,アスファルト混合物層内部の温度分布,表層の厚さ,航空機荷重の位置や大きさ等を変化させた場合の層間の応力・ひずみ分布の傾向を把握した.その結果,表層-基層間に発生する鉛直引張ひずみは,一度の発生で層間が剥離するほどの大きさではないものの,繰返し発生することで疲労破壊を呈する可能性が無視できない大きさのひずみであることが判明した.また,この鉛直引張ひずみが発生する位置は,種々の解析条件を変化させたとしても,航空機脚荷重のタイヤ縁あるいはタイヤ間中央であることが特定された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多層弾性解析については概ね順調に進んでいる.表層-基層間に発生する鉛直引張ひずみは,一度の発生で層間が剥離するほどの大きさではないものの,繰返し発生することで疲労破壊を呈する可能性が無視できない大きさのひずみであることが判明した.また,この鉛直引張ひずみが発生する位置は,種々の解析条件を変化させたとしても,航空機脚荷重のタイヤ縁あるいはタイヤ間中央であることが特定された.当初の計画と比較して,実際の空港における層間剥離の実態調査やアスファルト混合物を用いた試験方法及び試験条件の基礎検討について進捗がやや遅い.理由としては,2016年熊本地震における対応等で当該研究のエフォート率を下げざるを得ない状況であったことが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
前年後に引き続き,多層弾性解析による分析を進めるとともに,実際の空港における層間剥離の実態調査やアスファルト混合物を用いた試験方法及び試験条件の基礎検討を進める.層間剥離の実態調査では,ブリスタリングが発生している空港アスファルト舗装を対象とし,層間剥離状況の位置・大きさに関する季節的変動等について調査を行うとともに,コアの採取を実施し,層間剥離面の状態を確認する予定である.また,アスファルト混合物を用いた試験方法及び試験条件の基礎検討については,多層弾性解析により想定されるひずみの大きさが概ね判明したところであるが,一度の載荷で剥離が生じるほどの大きさのひずみは発生していなかったため,静的載荷試験のみならず,繰返し載荷試験も念頭においた基礎検討を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年熊本空港に関する対応に労力を割かざるを得ない状況であったことから,実際の空港における層間剥離の実態調査が遅れており,当初計画に比べて旅費の執行が進んでいないことが理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は実際の空港における層間剥離の実態調査を行える見込みであることから,次年度使用額は調査旅費として使用する予定である.
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