本研究は海水作用を受けるコンクリートの局所劣化(海水劣化)のメカニズムを解明するとともに,その劣化対策および周辺技術を開発することを目的としている。平成28年度には,以下の3点について検討した。 [1]海水劣化の発生条件を明確にするため,既往の調査結果を再整理した。整理の結果では,コンクリートの海水劣化は材料等に依存せず,同じコンクリートであっても劣化の発生の有無にばらつきがあった。また,海水劣化したコンクリートを分析した結果,微細なひび割れが多く発生し,その中をエトリンガイトやブルーサイトが充填している状況が確認できた。マクロな海水劣化の予測モデルとして,Mgの浸透深さを指標としたモデルを提案した。 [2]セメント硬化体の体積変化について,海水の乾湿条件等をパラメータとして,長さ変化をモニタリングする実験を開始した。現状で目立った変状は認められていないが,幾つかの要因では緩やかに膨張が始まった。また,試験途中で幾つかの試験体が破損した。したがって,平成29年度の実験では,試験体の寸法・形状を工夫して改めて実験することを考えている。 [3]熱力学相平衡計算ソフトウェアであるGEMSを用いて,海水劣化の条件について検討した。その結果,海水濃度がある一定の領域で体積膨張する可能性が示された。海水とNaClの比較から,体積膨張には硫酸イオンの影響が強いことが分かった。次に,幾つかの条件(海水組成,材料組成)で,エトリンガイトの生成条件について検討した。さらに,海水が相組成に及ぼす影響について感度解析を実施した。
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