本研究は海水作用を受けるコンクリートの局所劣化(海水劣化)のメカニズムを解明するとともに,その劣化対策および周辺技術を開発することを目的としている。平成29年度には,以下の3点について検討した。 [1]熱力学相平衡計算により,海水劣化の条件について検討した。その結果,海水濃度がある一定の領域で,また日射や気温の上昇に伴って,局所的に体積膨張する可能性が示された。 [2]海水劣化したコンクリートの分析を行い,海水に起因する膨張劣化であることを電子顕微鏡観察およびエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いて明らかにした。局所的に多くの微細ひび割れが発生しており,その劣化フロントではエトリンガイトが生成していた。これらの結果は概ね相平衡計算の結果と整合していた。 [3]セメント硬化体の体積変化について,海水の乾湿条件等をパラメータとして,長さ変化をモニタリングする実験を継続した。一部の試験体で変状が確認され,今後分析を進める予定としている。
|