研究課題/領域番号 |
16K06461
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
宮下 剛 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20432099)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 維持管理 / 橋梁 / 性能 / Load Rating / LRFR |
研究実績の概要 |
AASHTOでは部分係数法を用いた橋梁維持管理の体系が,設計体系と合わせて既に整備されている.一方,我が国では設計体系が部分係数法に移行しようとしているにも関わらず,部分係数法に立脚した維持管理体系の議論は少ない.AASHTOでは,Manual for Bridge Evaluation(MBE)を用いて点検結果を反映させながら重量制限の評価(Load Rating)を行える.そこで,本研究では,鋼橋を対象として,日本版MBEの構築に向けた資料に資する研究を行う.今年度は,具体的に,(1)Load Ratingの試計算,(2)強度評価の精緻化に向けた鋼橋桁端部の腐食状態と耐荷力低下量の関係の整理を中心に進めた. (1)については,L-20荷重で設計された単純合成鈑桁橋を対象に,許容応力度設計法を基にした格子桁解析によるLoad Ratingを行った.その結果,曲げモーメントの評価ではL-20荷重ではRF値が1を超えるもののB活荷重ではRF値が1を若干下回る,支点上の垂直補剛材の評価ではL-20荷重ではRF値が1を超えるもののB活荷重ではRF値が約0.75となる,せん断力の評価ではL-20荷重ならびにB活荷重ともにRFが1を大幅に超える,等が明らかとなった.また,今後の検討に向けて,対象橋梁の三次元立体有限要素モデルを作成した. (2)については,近年,腐食損傷を有する鋼鈑桁橋の桁端部の解析および実験の研究が進められているものの,現場では腐食損傷を有する桁端部の対策の要否について定性的な判断によることが多い.そこで,既往の実験および解析データを整理し,構造諸元から設定できる降伏耐力の低下率や残存板厚率等をパラメータとした腐食による桁端部の耐力への影響図を作成し,欠損状態の耐力を分析した.その影響図を基に,健全時からの耐力低下率の下限値を利用した終局耐力推定式について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究実施計画は,(1)Load Ratingの試計算,(2)損傷と耐荷力の関係の整理,(3)長期モニタリングの実施であった.(1)については,橋梁管理者から,一般図,断面構成図,設計計算書,点検結果を提供してもらい,Load Ratingの試計算を実施した.(2)については鋼橋桁端部の腐食状態と耐荷力低下量の関係について整理した.そして,その結果を取りまとめて土木学会論文集に論文投稿し,受理されて修正中である.(3)については,橋梁管理の都合から既にモニタリングを取り止めた現場もあるが,いずれの現場においても,1年程度のモニタリングデータは蓄積できており,今後の検討を進める上での問題はない.よって,研究は概ね順調に進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
(1)Load Ratingの試計算では,鈑桁以外にもトラス橋なども対象とするとともに,AASHTOでは既に実現されている,設計→点検→診断→マネジメントいったソフトウェア連携にも主眼を置きたい.具体的には,橋梁概略設計ソフトウェアなどを用いて,Load Ratingの試計算,ソフトウェア連携について検討する.また,MBEの最新版にはトラス橋ガセットのLoad Rating手法が記載されているが,国内の実橋でもガセット部の腐食が見られることから,これに関する情報収取,整理も進める.(3)長期モニタリングの実施では,状態係数にモニタリング結果を反映させる方法論について主眼を置きたい.状態係数の検討では,例えば,長期モニタリングを通じて得られる,気温と固有振動数の変動幅を明確にした上で,この変動幅を超えるような損傷イベントを有限要素解析から同定することを考えている.
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