我が国では道路橋の設計体系が部分係数法へと移行したものの,部分係数法に立脚した維持管理体系の議論は少ない.AASHTOでは,Manual for Bridge Evaluation(MBE)を用いて,点検結果を反映させながら,補修・補強,重量制限,閉鎖といった評価(Load Rating)が行える.そこで,本研究では,主として鋼橋を対象とし,日本版MBEの構築に向けた資料に資する研究を行う.得られた知見を以下に示す. (1) 近年,腐食損傷を有する鋼鈑桁橋の桁端部の解析ならびに実験の研究が進められているものの,現場では腐食損傷を有する桁端部の対策の要否について定性的な判断によるところが多い.そこで,既往の実験および解析データを整理し,構造諸元から設定できる降伏耐力の低下率や残存板厚率等をパラメータとした腐食による桁端部の耐力への影響図を作成し,欠損状態の耐力を分析した. (2) 単純合成桁2橋ならびに連続非合成桁1橋を対象に,Load Ratingの試計算を行った.具体的には,それぞれの橋梁について格子解析とFEM解析を実施して各種基準による比較を行った.その結果,旧道示のTL-20活荷重で設計された橋梁でもFEM解析を用いるとRF値が1.0 を上回る場合があること,合成桁は限界状態設計法を用いることでRF値が1.0より大きくなることなどがわかった. (3) 実橋において,トラスガセットと弦材の溶接部で深刻な腐食損傷が発見されたことから,溶接部の腐食損傷量がトラスガセットの耐荷力に与える影響についてFEM解析によるパラメトリック解析を行った.その結果,損傷量が大きくなるに従い,損傷モードがガセットの局部座屈からせん断座屈に移行することがわかった.また,残存板厚と耐荷力低下量の関係を表す図表を作成するとともに,損傷時の力学状態を考慮した残存耐荷力推定式を提案した.
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