研究課題/領域番号 |
16K06463
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
深田 宰史 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (10313686)
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研究分担者 |
鈴木 啓悟 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (40546339)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ASR / 走行荷重 / 変位 / ひずみ / BWIM |
研究実績の概要 |
平成29年度は,以下に列挙した項目について研究を進めることができた. [既存のBWIM(Bridge Weigh In Motion)の精度を検証する.] 平成28年度において,実際にASR劣化を生じていた橋梁において,試験車を用いた車両走行試験および一般車走行によるモニタリングを行い,走行荷重と床版変位の関係を明らかにすることができた.既存の走行荷重評価方法BWIM(Bridge Weigh In Motion)の精度を検証するため,いくつかの手法を用いて比較検討した.その結果,桁端部の垂直補剛材を用いて評価する方法では,ジョイントを通過する際の車両の衝撃振動が精度に大きな影響を及ぼすことが明らかになった.実際には衝撃を含んだ荷重が橋梁床版に作用しており,どの部位の荷重評価をしたいのかによって,BWIMの手法を使い分ける必要がある.また,床版ひずみを用いた手法では,比較的バラツキの少ない安定的な結果を得ることができたが,地方道では高速道路と違い,車輪の通過位置がばらつくため,床版ひずみの計測位置には注意が必要である. [石川県または福井県内の主要幹線道路にてBWIMを行い,重交通荷重の走行実態を明らかにする.] 今回計測した上記の橋梁において,交通荷重の実態を把握することができ,設計荷重(L荷重,T荷重)と比較した.これにより,大型車両の混入率が比較的多いことがわかったが,過積載車両の走行実態はほとんど確認されなかったため,大型車交通の疲労などが当該床版の劣化に影響を与えているとは判断できなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では,以下の手順で進めることになっている.①走行荷重の橋梁進入時および橋梁上での軸重の変動(増幅)について明らかにする.②既存のBWIM(Bridge Weigh In Motion)の精度を検証する.③石川県または福井県内の主要幹線道路にてBWIMを行い,重交通荷重の走行実態を明らかにする.④健全と劣化床版を対象とした床版変位と軸重の変動量を考慮した関係を長期モニタリングし,劣化床版の健全度評価と将来の劣化予測をする. 平成29年度は,②および③まで進めることができた.それぞれの研究実績については「研究実績の概要」で説明した通りである.④の項目については,将来の劣化予測まで明らかにできていないため,解析を行うことにより,実測と解析との比較から残存耐力および劣化予測を行うことにする. 以上から,「概ね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,これまでに試験車走行や一般車走行により計測してきた床版変位データと解析値との比較を行う.数値解析では,解析ソフトDIANAを用いてFEMにより詳細なモデル化を行い,健全な床版コンクリートの場合と床版コンクリートがASR劣化して鉄筋位置で層状になった場合の剛性低下を考慮したパラメトリックな解析を行う予定である.これによって得られた結果から,実交通で得られた最大荷重を用いた耐荷力性能を評価する.さらに,前年度に収集した一般車走行による輪荷重と床版変位との関係と比較することにより,ASR劣化したコンクリート床版の残存耐力や劣化予測を行う. また,次の研究段階として,本研究で着目した床版変位を用いた健全度評価法についても研究を進める.具体的には,既知重量の車両が走行した時の床版パネルが変位した全体形状を計測することにより,床版の健全度を評価する手法をベースとするが,実際には多点計測することになるため,困難なことが多い.そこで,マックスウェルの相反定理(移動荷重 Pjを作用させたときに,1系j点のたわみdjiのたわみ曲線は,2系の着目点iのたわみdijの影響線を表している定理)を用いる.これにより,1箇所の測点でたわみの影響線を得ることができると,それが対象箇所の床版たわみ形状になるため,床版の健全度を評価できることにつながる.この方法を使って健全度評価が可能であるのか調べることにする.
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