北陸地方などの積雪寒冷地域の主要幹線道路における鋼道路橋では,ASRによる劣化に加え,冬季に散布される凍結防止剤による塩化物イオンの浸透により,床版内部の鉄筋が腐食し,舗装上にポットホールが生じている.このような劣化に至るまでには,床版内部の材料的な劣化に加えて,外的な車両重量(軸重,輪荷重)や交通量などが大きく影響している. 本研究では,ASRによる劣化が確認された北陸地方の山間部の橋梁群からRC床版を有する鋼道路橋を選定し,大型車両走行時の軸重(輪荷重)の変動を明らかにするとともに,試験車走行試験および一般車を対象とした走行荷重モニタリング(BWIM)を行うことで,交通荷重実態についても明らかにした.また同時に,有限要素解析(FEA)を行い,モニタリングで得られた走行荷重と床版変位の関係と比較することで,現橋のRC床版における剛性を評価し,さらに弾塑性解析との比較により残存耐力を明らかにした. 一般車による走行荷重モニタリングからは,過積載車両による影響は少ないと判断したが,モニタリング期間中の走行荷重と床版変位の関係および解析結果との比較から,漏水が見られた劣化箇所では,コア試験と同程度の弾性係数の低下が確認でき,健全時と比較して著しく剛性が低下していることを明らかにした.さらに,終局耐力を評価するため,RC床版の弾塑性解析をした結果,現橋の床版耐力は,健全と比較して約3割程度低下していると考えられるが,現状の交通荷重レベルでは安全に対して余裕があると推察した. このように劣化橋梁上を走行する荷重の軸重変動および一般車を対象としたBWIMによる走行荷重実態を明らかにし,解析結果と比較することにより,現状の床版剛性および残存耐力を明らかにすることができた.
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