研究課題/領域番号 |
16K06468
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松村 政秀 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60315976)
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研究分担者 |
葛西 昭 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (20303670)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 桁端部 / 耐震設計法 / 耐震補強法 / 保有性能 |
研究実績の概要 |
鋼橋上部構造の桁端部では,地震時に横荷重の作用により多様な地震被害が生じ,早期復旧の妨げとなることから,本研究では,桁端部構造の保有性能を実験・解析の両面から評価し,L2地震動を受ける鋼桁の耐震設計法および耐震補強法の高度化を図ることを目的としている.このとき,桁端部は腐食や疲労による損傷も多く発生しており,維持管理の容易さへの配慮も不可欠である. まず,平成28年度には,橋梁管理者・橋梁設計者からのヒアリング,設計図書の分析を通じて,とくに,平成28年4月に熊本地震が発生したことを受け,比較的最近に建設された橋梁および桁端部に生じた地震被害の調査・分析を通じ,維持管理性および耐震性の観点から,桁端部の設計の現状と要求される機能・性能を調査した. また,既存鋼橋に採用されている逆V字形の対傾構を有する対傾構形式,耐震性の向上が期待され,新設の桁端部構造として推奨されている,充腹形式の単横桁を有する充腹形式を対象に,桁端部の部分解析モデルを作成し,横荷重を受ける場合の耐荷性能を数値解析により検討した. 以上の結果,対傾構形式では対傾構と支承を接続するための突出部(ウェブギャップという)が変形するため,横荷重に対する剛性,強度とも充腹形式に比べ不足すること,充腹形式では充腹部に損傷が生じる可能性は低く,ウェブギャップが集中して変形すること,支点上補剛材と対傾構の板厚を増加させた対傾構形式は充腹形式とほぼ同等な耐荷性能を示すこと,両形式ともウェブギャップの剛性と強度を適切に設計する必要があること,を明らかにした. さらに,横荷重を受ける鋼橋上部構造を設計する上で,強地震時における桁端部への作用地震力の算定が必要であり,一般的な鋼橋上部構造を選定し,数値解析モデルを作成し,鋼桁の高さ方向の地震慣性力の分布,各種部材への最大作用断面力を算出に向けて準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画実施および進捗状況は概ね順調に進展している.ただし,研究開始当初に熊本地震が発生したことを受け,橋梁および桁端部に生じた実際の地震被害を踏まえて,維持管理性および耐震性の観点から,桁端部の設計の現状と要求される機能・性能を調査しており,それらの調査・分析には当初計画以上の時間を要したため,当初,平成28年度に実施予定であった実験準備の一部を,平成29年度に実施することとした.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に上部構造のうち桁端部のみを対象とした部分モデル,および橋梁上部構造全体を対象とした全体モデルを作成した.平成28年度には主として部分解析モデルを用いて,現行の設計法にしたがう桁端部の耐荷性能を数値解析により明らかにすることができたことから,今後,全体モデルを用いて,地震による加振時の上部構造の動的挙動を明らかにする.平成28年度に得た知見に基づくと,主桁と支点上補剛材から構成されるウェブギャップの剛性と強度が,桁端部の耐荷性能および耐震性能に著しい影響を与えることが明らかになったことから,ウェブギャップを対象とした載荷実験の実施に向けた検討を進め,載荷実験を実施する.また,橋梁の耐震設計において地震力の低減に有効な免震効果や制震効果は,橋軸方向の地震時挙動に期待して耐震設計されている.橋軸直角方向には,移動制限装置が設置され,免震硬化や制震効果を設計上,期待していないことから,移動制限装置を改良して,地震荷重レベルにおうじて,固定→可動へと支承条件を変化させる手法や桁間を柔に接続する手法の有効性についても検討し,併せて,本研究の目的である合理的な桁端部の耐震設計法,ならびに既存桁端部に対する耐震補強法の高度化に繋げたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始当初に熊本地震が発生したことを受け,橋梁および桁端部に生じた実際の地震被害を踏まえて,維持管理性および耐震性の観点から,桁端部の設計の現状と要求される機能・性能を調査し,さらに,熊本地震により唯一の分担研究者も被災したが,分担研究者の学舎が使用不可となった影響もあり,それらの調査・分析に時間を要したため,計画の一部を平成29年度に実施することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画は概ね順調に進展しているものの,当初,今年度に実施することを予定していた,実験実施のための準備の一部を次年度に実施することとし,実験実施は,当初予定どおり進める予定である.
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