研究課題/領域番号 |
16K06470
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
松田 一俊 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (20609466)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマアクチュエータ / 自己励起型渦励振 / カルマン渦励振 / 風洞実験 / ばね支持実験 / 流れの可視化実験 / 矩形断面 |
研究実績の概要 |
プラズマアクチュエータを用いた本学での従来の研究成果より,自己励起型渦励振およびカルマン渦励振の発現風速域において,強制加振中でのプラズマアクチュエータの気流制御効果が流れの可視化実験により定性的に確認されている.しかし,ばね支持実験を行うことにより,プラズマアクチュエータの空力振動抑制効果を定量的に把握するまでには至っていなかった. したがって,平成29年度の研究は,断面辺長比2の矩形断面を用いたばね支持実験によりプラズマアクチュエータの空力振動抑制効果を定量的に明らかにすることを目的とした.具体的には,断面辺長比の矩形断面模型を用いて,自己励起型渦励振およびカルマン渦励振を対象にばね支持実験を行い,既往の研究と比較することにより実験手法の妥当性を確認し,その後空力振動抑制効果をプラズマアクチュエータの作動/非作動による応答の差により確認した.なお,本研究の計画当初は,風洞風速10m/sにおけるプラズマアクチュエータを用いた気流制御が有効に機能するプラズマアクチュエータの機構を確立し,その次に制御効果の定量的把握を目的としたばね支持実験を行う予定であった.しかし,平成29年度当初に再度研究計画を見直した結果,風洞風速は低風速であっても制御効果を定量的に把握することが先決であるという結論になった.そのため,平成29年度の研究内容を上記のように変更した次第である. 平成29年度の研究の結果,プラズマアクチュエータによって気流を制御することによる自己励起型渦励振およびカルマン渦励振の抑制は可能であることが明らかとなった.ただし,カルマン渦励振発現風速域においては,高風速側での振動抑制効果は確認されなかった.また振動抑制の傾向として,自己励起型渦励振発現風速域では高風速側,カルマン渦励振発現風速域では低風速側で振動の抑制効果が大きいこという結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の判断根拠は,従来の研究成果であるプラズマアクチュエータの空力振動抑制効果を流れの可視化実験によって定性的に確認したことが,平成29年度の研究において,その抑制効果をばね支持実験によって定量的に確認することができたためである.平成29年度の風洞実験におけるプラズマアクチュエータは,制御機器類の制約から模型の上面上流端の一ヶ所のみであったものの,下面上流端にも設置できる橋梁断面であればよい制御効果が高まることが推察される.ただし,平成29年度に実施したばね支持実験による抑制効果の定量的確認は,当初計画の風洞風速10m/s程度ではなく,風洞風速4m/s程度において行われた.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究は,次の2点を目的とする. 1.平成29年度の研究において,プラズマアクチュエータは,制御機器類の制約から模型の上面上流端の一ヶ所のみであったが,平成30年度は,下面上流端にも設置することにより制御効果が高まることを確認する.模型に2つのプラズマアクチュエータを設置することになるので,ケーブル類が増えることから振動系に与える減衰が大きくなることが予想される.平成29年度の成果を活用して構造減衰が大きくならないように細心の注意を払う. 2.既往の研究からプラズマアクチュエータによって誘起される周辺の流速は,プラズマアクチュエータに印加する電圧および周波数を高めることにより大きくなることが分かっている.プラズマアクチュエータの誘起流速を高めた場合での振動抑制効果を平成30年度の研究で検討する所存である.検討するためのデータとして,平成29年度に行われた流体力学会年会2017講演論文集に登載されている論文を参考にして検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では平成28年度に高速度カメラ(1,450千円)を購入する予定であったが,購入時期を平成30年度に変更したことによる.また,矩形模型本体および可視化実験用風洞に設置するばね支持実験装置の合計金額が,予算より約400千円超過した.この結果,差し引き1,000千円の次年度使用額が生じた.
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