本研究は、鋼桁端支点近傍で発生しやすい鉛直及び水平補剛材の腐食損傷が主桁のせん断耐荷力に及ぼす影響を解明し、腐食損傷鋼桁の機能回復法の提案を目的としている。 これまでの実験的研究では、下フランジが腐食破断した鋼桁試験体によって、せん断耐荷力の低下メカニズムの解明と破断部の補修法に当板ボルトと炭素繊維補修を適用した実験を行った。実験結果より、下フランジと腹板の境界部破断と鉛直補剛材境界部の一部が破断した試験体では、健全モデル試験体と比較してせん断耐荷力が約半減した。その際、健全モデルでは後座屈強度の評価指標であるウェブ対角線上(45度方向)に斜め張力場が形成されるのに対して、損傷モデルでは破断上部を始点とした角度の小さい張力場形成となり、それが耐荷力低下要因との成果が得られた。また、補修法の実験結果より、当て板ボルトモデルは健全相当の耐荷力回復と十分なダクタリティが得られたが、当板ボルトと炭素繊維併用モデルでは健全相当のせん断耐荷力は得られたが、ピーク荷重後の炭素繊維剥離により急激な耐力低下となった。 解析的研究では、腐食進行状態を種々変化させたパラメトリック数値解析を行った。解析結果より、水平補剛材近傍腐食タイプでは,腐食の進行状況により、せん断座屈時の支持形態が4辺単純支持から3辺単純1辺自由条件に移行し耐荷力が低下した。また、下フランジ近傍腹板腐食タイプでは、下フランジ側のアンカー位置が垂直補剛材部分に移行したことで耐荷力が低下した。 以上のことを踏まえ最終年度では、腐食によりせん断耐荷力が低下した水平補剛材及び水平補剛材近傍腹板の腐食損傷および下フランジ近傍腹板腐食を対象とし、当て板ボルトと炭素繊維接着の併用工法を提案し、実腐食腹板を用いた実物大供試桁に施し、耐荷力実験を行った。その結果、同工法によりせん断耐荷力と変形保持性能が健全相当に回復できることを実証した。
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