研究課題/領域番号 |
16K06473
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
平野 廣和 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80256023)
|
研究分担者 |
佐藤 尚次 中央大学, 理工学部, 教授 (30162457)
鈴木 森晶 愛知工業大学, 工学部, 教授 (90273276)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | バルジング / やや長周期地震動 / 貯水槽 / スロッシング / 耐震設計 / 熊本地震 |
研究実績の概要 |
平成28年度本研究着手の直後の4月14日~16日に熊本県を中心として震度7の地震が2回、震度6強が2回発生し、長周期の地震動も観測された。研究グループでは、発災直後の4月17日から半年に渡って数回の熊本市を中心として貯水槽関連の被害の現地調査を実施して来た。この調査で、特に熊本市周辺の災害拠点病院で貯水槽の被害や上水道の大型配水池等でのタンクの損傷を多数確認することができた。被害域は、熊本市内周辺に限らず震源から200Km余り離れた別府市付近まで広がっている事を掴んだ。 このようなことから本年度は、新たな事例である熊本地震ので被害調査から得られたデータを基に、貯水槽の被害がスロシング現象が原因なのか、バルジング現象が原因なのか、また両者が同時に発生したのかを被害事例毎に確認してきた。また、最新の設計基準で製作されている貯水槽にも多くの被害が生じていることも判明した。 一方、本研究の中心研究課題であるバルジング現象は、側板のパネルが液体と接して振動することから、側板が弾性体として変形しながら振動することであり、流体と構造の連成振動(Fluid-Structure Interaction)の問題である。そのために明らかにスロッシング現象とはその性状が異なっている。このバルジング現象が、現行の設計に反映されてこないことが判った。そのためバルジング現象発生時には、側板のパネルに水深方向へ大きくなる水平方向の動液圧が作用し、これが地震発生に衝撃力となり側板を加振することから、下部側板のパネルに損傷被害が生ずることとなることの仮説を立てた。さらに振動方向に方向角がある場合には、波が隅角部に集中することからこの部分に損傷が集中することも指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度本研究着手の直後に熊本地震が発生し、この地震で発生した貯水槽の被害調査に多くの時間を使った。しかし、この原因究明は本研究の大きな柱であることから、重点的に研究を実施した。 一方、当初の研究計画であった (1) 小型模型を用いての制振装置の最適形状選定、(2) 中型模型を用いての制振装置の最終形状確認、(3) CFD による構造と流体の連成解析に関しては当初の計画通りに進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
小型、中型模型を用いた振動実験得られた成果を実機貯水槽(3、000×3,000×3,000)へ生かす研究を実施する。但し、熊本地震の被害調査から得られた結果を生かすこととをまず第一の目的とするので、小型、中型模型を用いての振動台実験も年度の前半は行うこととする。特に、バルジング現象発生時には、側板のパネルに水深方向へ大きくなる水平方向の動液圧が作用し、これが地震発生に衝撃力となり側板を加振することから、下部側板のパネルに損傷被害が生ずることとなることの仮説を立てたが、これを実証して行く。さらに、仮説に対応した制振装置も新たに検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究着手直後に熊本地震が発生し、本研究の目的の一つである『バルジング』によると思われる被害が多数発生した。そのため、被害調査を優先し、これより原因究明を優先した。現地調査で得られた成果を本研究に生かすために、愛知工業大学耐震実験センターでの実機水槽での振動実験を次年度へとした。
|
次年度使用額の使用計画 |
愛知工業大学耐震実験センターで行う振動実験へ使用する。
|