研究課題/領域番号 |
16K06475
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
出雲 淳一 関東学院大学, 理工学部, 教授 (50183166)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 連続繊維ロープ / コンクリート部材 / 補強 / 機能回復 / 定着 / 緊張 |
研究実績の概要 |
本研究は、震災や老朽化などにより機能が低下したコンクリート部材を対象にして、高性能連続繊維ロープを用いて機能を回復させることを目的としている。連続繊維ロープをコンクリートに巻付けて補強する場合、ロープをコンクリート端部で定着することが必要となる。連続繊維ロープによる補強効果を十分に発揮するためには、十分な定着強度を確保することが求められる。平成29年度は、連続繊維ロープを用いたコンクリートの補強設計法を確立するために、連続繊維ロープをコンクリート端部で定着させた場合の力学的挙動を明らかにすることにした。連続繊維ロープがコンクリートに定着される部位をモデル化した実験方法を新たに考案して実験を行い、連続繊維ロープの定着強度の評価を行った。 実験では、コンクリートブロックを2体製作して、この2体のコンクリートブロックの間に油圧ジャッキとロードセルを設置して、コンクリートブロックを連続繊維ロープで巻付けた後、油圧ジャッキによりコンクリートブロック間を押し広げることにより、定着部の強度と変形性能を評価した。連続繊維ロープの定着強度は、連続繊維ロープを巻付けてロープを束ねた箇所をステンレス製バンドで締付けて固定することによる引張抵抗力と隅角部におけるロープとコンクリートとの摩擦力から成る。最初に、ロープの締付部の引張強度を評価するために、ロープの種類(アラミド繊維ロープとビニロン繊維ロープ)と締付け箇所数を実験パラメータとして、ロープ締付け部の引張強度と変形特性を明らかにした。次に、ロープ締付け部と隅角部の摩擦力を含む引張抵抗力を実験により明らかにした。この引張抵抗力から、ロープ締付け部の引張抵抗力を差し引いた引張力が、隅角部の摩擦力として求めることができ、これらの実験結果から、ロープの種類やロープ締付け方法の違いが定着強度に及ぼす影響を定式化することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続繊維ロープのコンクリート部材の補強材としての利用方法を確立するために、連続繊維ロープの補強効果について検討を行ってきた。当初の計画では、今年度は連続繊維ロープの緊張方法についての検討を行う予定であったが、緊張のための治具の構造の変更、連続繊維ロープと鋼管を一体化する特殊な膨張材料の確保などの問題から、時間を要することとなったために、連続繊維ロープをコンクリート端部で定着する際の定着強度の評価を前倒しで行うことにした。今年度の研究を通して、連続繊維ロープでRC部材のせん断補強する場合の設計情報の蓄積を図るとともに、それを実現するための施工方法の検証ができたと考えている。連続繊維ロープの緊張に関する研究は、当初の予定よりも進捗が遅れているものの、その他の部分が先行しているので、研究計画を遂行することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進については、以下の手順で実施する予定である。 (1)連続繊維ロープの緊張特性について、連続繊維ロープの定着装置を完成させた後、予め準備したRC棒部材内のシースに連続繊維(アラミド繊維)ロープを配置して、ロープを緊張して定着する。その後、連続繊維ロープの緊張力の経時変化をセンターホール型のロードセルにより常時測定を行い、連続繊維ロープの経時変化による緊張力減少についてのデータの蓄積を行い、アラミド繊維ロープのリラクセーションの特性を明らかにする。 (2)連続繊維ロープによるプレストレストコンクリートの特性について、(1)と並行して、連続繊維ロープにより初期プレストレス力を導入したRCはり供試体を製作して、曲げ載荷試験を実施する。プレストレス力を与えたことによりコンクリートに変状や損傷などの影響がないかを確認するとともに、連続繊維ロープに導入された初期緊張力の違いが、部材の耐荷力に及ぼす影響について明らかにする。 これまでの研究成果のとりまとめ作業を行い、連続繊維ロープによる損傷したRC部材の機能を回復させるための補強方法を提案し、連続繊維ロープのコンクリート部材の補強材として利用方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、1,672円の差額が生じたが、予算執行上の誤差と考えており、翌年度分と合わせて、本研究の遂行に使用したいと考えている。
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