研究課題/領域番号 |
16K06478
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
大山 理 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70411410)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 橋梁 / 火災 / 降伏強度 / 引張強度 |
研究実績の概要 |
現在,研究代表者は,最悪の場合,落橋するなど,近年,増加傾向にある“橋梁火災”に対して,解析および実験の両面で研究を行っている.その中で,1) 火災による熱影響を受けた部材の耐荷力を評価する際に必要となる構造用鋼材の高温時および加熱冷却後の常温時強度のデータ収集が,1968年以降,統計的に行われていない.2) 鎮火後の橋梁の通行可否を判定するにあたり,熱影響により一部変形した桁の耐荷力が明らかにされていないなどの問題点が挙げられる.そこで,種々の検討を通して,大都市圏内をはじめとする日本を支える交通ネットワーク網に大きな影響を及ぼす次なる災害リスク(橋梁火災)に対して,従来の外観変状から評価ではなく,数値的根拠を持って通行可否を判定することができる性能評価法を構築することを目的としている. 平成28年度は,要素試験として,鋼材引張試験片を製作し,材質,温度ならびに時間をパラメーターとして加熱を行い,加熱冷却後の常温時強度に関する最新のデータ収集を行った. その結果,SM490材に着目すると,降伏強度は1100℃で加熱時間30分および60分において,常温時の同強度よりも平均28.4%および38.1%低下,引張強度は平均10.3%および14.6%低下することがわかった.また,900℃における降伏および引張強度は加熱時間によらず強度の回復がみられ,さらに,引張強度は,加熱時間による差異はほとんどみられなかった.一方,SM490Y材において,降伏強度は,1100℃で加熱時間30分および60分において,常温時の同強度よりも平均39.5%および41.4%低下,引張強度は,平均19.4%および23.5%低下することがわかった.なお,SM490材については,降伏,引張強度ともに加熱時間による差異はみられなかった. 最後に,試験結果より,力学特性の低減係数を簡易的に推定する式の提案を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画は,【桁試験】の予備検討(熱伝導解析)と【要素試験】の準備(鋼材引張試験片の製作など)を挙げていた. 【桁試験】の予備検討は,鋼・コンクリート合成桁を対象に,数種類の橋梁火災による熱履歴のパターンを想定し,汎用プログラムSOFiSTiKを用いて熱伝導解析を行った.そして,鋼桁は熱影響を受け易く,コンクリート床版は火災を受ける下面を除くと大半は温度上昇が見られないなどの結果が得られた. 高温時および加熱冷却後の常温時強度を把握するために実施する【要素試験】は,準備として,パラメータ(鋼種と加熱時間)を抽出した後,鋼材引張試験片の製作までを行う予定にしていた.しかし,加熱冷却後の常温時強度のみ,先行して,加熱および引張試験を実施し,上述の研究実績の内容に記した結果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度,【桁試験】および【要素試験】は,当初の予定通り,以下の内容で研究を進める予定である. 【桁試験】は,熱伝導解析結果より,実験計画書の作成から供試体の製作までを行う. 【要素試験】は,引き続き,高温時および加熱冷却後の常温時強度のデータ蓄積(加熱,引張試験)を行うとともに,力学特性の低減係数を推定する式の精度向上に努める.
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次年度使用額が生じた理由 |
【要素試験】の加熱および引張試験は,バラツキを考慮して,試験片3本を1つのパラメーターとして行っている.したがって,試験片を購入するための予算から,次年度使用額が生じた理由は,残金で新たな試験片3本および熱電対などの計測センサーを購入することが難しかったからである.
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次年度使用額の使用計画 |
【要素試験】の試験片もしくは【桁試験】の桁製作の費用の一部に充当する予定である.
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