現在,研究代表者は,最悪の場合,落橋するなど,近年,増加傾向にある“橋梁火災”に対して,解析および実験の両面で研究を行っている.その中で,1) 火災による熱影響を受けた部材の耐荷力を評価する際に必要となる構造用鋼材の高温時および加熱冷却後の 常温時強度のデータ収集が,1968年以降,統計的に行われていない.2) 鎮火後の橋梁の通行可否を判定するにあたり,熱影響により 建設頻度の高い鋼・コンクリートの剛性低下が明らかにされていないなどの問題点が挙げられる. そこで,種々の検討を通して,大都市圏内をはじめとする日本を支える交通ネットワーク網に大きな影響を及ぼす次なる災害リスク(橋梁火災)に対して,従来の外観変状から評価ではなく,数値的根拠を持って通行可否を判定することができる性能評価法を構築することを目的とした. 平成30年度は,主に,以下の2つの実験を行った. 1) SM400とSM490Yの2種類の鋼材に対して,常温,200℃,500℃,800℃ならびに1100℃で高温引張試験を実施した.加熱は,鋼材の受熱温度が所定の値に達するまで20℃/分で加熱し,均熱時間は30分とした.その結果,400~500℃で強度低下が始まり,1100℃で降伏強度は常温のそれに対し,ほぼ0(ゼロ)になることがわかった.また,鋼種別による強度の低下割合に差異は見られなかった. 2) 製作した合成桁に対して,常温,340℃ならびに680℃加熱前後で静的載荷試験を実施した.その結果,340℃加熱自然冷却後は,合成挙動を呈したが,680℃で加熱した際,コンクリートに亀甲状のひび割れが生じ,加熱自然冷却後の桁のひずみは,合成と非合成の中間の値を示す結果となった.
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