研究課題/領域番号 |
16K06480
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
渡辺 力 函館工業高等専門学校, 社会基盤工学科, 教授 (90249714)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 構造解析 / 積層構造 / 厚板理論 / 複合材料 / 面外応力 |
研究実績の概要 |
本研究では,複合材料,鋼,コンクリートからなる複合構造に対して,鋼部材やコンクリート部材に接着された複合材料部材の剥離挙動,床版と鋼主桁の結合部の挙動,主桁とガセットプレートの取り付け部の挙動などを正確に評価できる効果的な構造解析を開発することを目的としている。 平成28年度は,複合材料要素の開発のために,定式化の基礎となる厚板理論の改良についての研究を行った。複合材料は,繊維で補強した方向に対して直角方向の強度を補うために強化方向の異なるラミナを何枚か重ねた積層板として使用されるため,異方性積層板としての取り扱いが必要となる。等方性平板に比べて,異方性積層板では板厚方向の高次成分の影響が顕著になるので,異方性積層板の解析には三次せん断変形理論などの高次理論が多く用いられている。しかしながら,三次せん断変形理論では,厳密解に対しての解の精度や変位場の採り方が解の精度に与える影響については言及されていない。また,変位仮定に基づく厚板理論では面外応力の精度が悪いという問題がある。 そこで,本研究では,等価単層理論に基づき,各種の厚板理論による周辺単純支持された直交積層板と逆対称斜交積層板の級数解を求め,三次せん断変形理論の厳密解に対する精度を明らかにするとともに,三次せん断変形理論の変位場の採り方が変位や応力に与える影響ついて明らかにした。さらに,等価単層理論により計算される面外応力の精度の改善を図るために,面外応力を構成方程式から計算せず,三次元弾性理論の応力の平衡方程式を用いて,応力の境界条件と層境界での連続性を満足する面外応力の3 成分をより一般的に計算する手法を開発した。 平成29年度には,この改良した厚板理論をさらに発展させ,効率的なZig-Zag変位理論を開発する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,正確かつ効果的な構造解析を開発することを目的としている。複合材料要素の開発において,複合材料のモデル化には異方性積層板としての取り扱いが必要となるが,異方性積層板では板厚方向の高次成分の影響が顕著になるので,高次の厚板理論を用いなければならないことが明らかになった。平成28度には,等価単層理論を用いた厚板理論を改良し,高精度に面外応力を求める手法を開発したが,より正確でかつ効果的な複合材料要素の開発のためには,厚板理論のさらなる改良が必要となっている。したがって,理論開発に予定以上の時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
複合材料のモデル化は異方性積層板としての取り扱いが必要となるが,異方性積層板では板厚方向の高次成分の影響が顕著になるので,高次の厚板理論を用いなければならない。さらに,航空工学分野では,異方性積層板の研究が盛んに行われているが,土木工学分野では航空工学分野に比べて比較的厚い部材が用いられることから,厚板理論の改良が極めて重要となる。このことから,平成28度には,等価単層理論を用いた厚板理論を改良し,高精度に面外応力を求める手法を開発したが,より正確でかつ効果的な複合材料要素の開発のために,さらにこの厚板理論の改良が必要となる。 平成29年度には,複合材料部材のより精密な構造解析のために,Zig-Zag理論やGlobal-Local重合理論を適用し,効果的な厚板理論を研究する。板厚比の大きな複合材料は,Zig-Zag変位を生じることが知られており,このZig-Zag変位を考慮した厚板理論を開発する。これらを級数解法に用いて,要素の精度検証のために解析解を求める。さらに,この理論をハイアラーキ要素に適用して,階層型複合材料モデルの開発を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通りに物品等を購入したが,第63回構造工学シンポジュウムでの研究発表が年度を超えた4月22日であった。
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次年度使用額の使用計画 |
第63回構造工学シンポジュウムの研究発表旅費を本年度から支出する。本年度の配分額については計画通りに支出することを予定している。
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