X線小角散乱により含水比による粘土鉱物の結晶構造の変化を測定した.Na型粘土鉱物では結晶性膨潤と浸透性膨潤がみられた.Ca型粘土鉱物では結晶性膨潤がみられるが,それ以上の膨潤はみられない.無イオン型粘土鉱物では全く膨潤がみられない.Na型の液性限界が著しく大きいのは,浸透性膨潤により自由水の増加が抑制されるためと分かった.また,Na型とCa型では塑性限界付近で粒子の配向が確認された. 中性子準弾性散乱により粘土鉱物中の水分子のダイナミクスを測定した.層間の水分子には速い拡散成分と遅い拡散成分の2種類が確認された.3水層ではいずれの成分の拡散係数Dtも10-9m2/sオーダーとバルク水(Dt=2.4×10-9m2/s)に近い値を示すが,2水層以下ではいずれの成分もDt≒10-10m2/sオーダーとバルク水より一桁小さな値を示す.また,滞在時間τ0は10~50ps程度と,バルク水(τ0=1.6ps)よりもかなり束縛を受けていることが分かった. 分子軌道法により構造最適化と粘土鉱物-水分子間の結合エネルギーを算出した.無イオン型では水分子は水素原子を珪酸塩層に向けて吸着するのに対し,Na型とCa型では水分子は酸素原子をイオンに向けて吸着する.また,結合エネルギーは無イオン型では7.9kcal/molと水素結合オーダーであるのに対し,Na型とCa型ではそれぞれ13.6kcal/mol,29.3kcal/molといずれも共有結合オーダーである. 分子動力学法により散乱実験から得られたデータをもとに,粘土鉱物中の水の挙動をシミュレートした.層間水も吸着水も珪酸塩層表面では構造化しており,その傾向は無イオン型よりNa型・Ca型のほうが顕著であった.さらに,イオンの価数が大きいほど周りの水分子は散乱せず纏まった構造をとる. これらの成果は,土のコンシステンシーを理解するうえでの有力な知見となりえる
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