半乾燥地における塩類集積防止の対策工の1つとして礫層と砂層を重ねたキャピラリーバリア地盤(以下,CB地盤と記す)がある.半乾燥地の乾燥砂は施工時の振動等で礫粒子の間隙に混入しやすく,層境界面を短・長期的に保持することが困難である.筆者らは,この課題に対し礫材の代替材として破砕貝殻を用いることで,CB機能を保持したまま乾燥砂が破砕貝殻層の間隙内へ混入することを同時に防止することを明らかにした.しかし,破砕貝殻を用いた場合,貝殻粒径により水分特性曲線が異なるため,保水性を有する微粒子分を含む破砕貝殻層で構築したCB地盤は水分(塩分)の上昇遮断機能を低下させる可能性がある.本研究は,微粒子分を含む破砕貝殻層を用いたCB地盤の長期に渡る毛管上昇の遮断効果を室内実験によって観察すると共に,供試体内の水分挙動の数値解析を行った. 鉛直一次元円筒装置を用いた実験を実施し,長期間に渡る水分上昇遮断機能の安定性を検証すると共に,実験結果を数値解析を用いて再現することで,貝殻型CB地盤の毛管上昇遮断効果の長期予測の妥当性およびHYDRUS-2Dの適用性を検証した.その結果,以下の知見が得られた. 1) 塩類集積防止工として,重機による転圧破砕時の粒度分布を想定した破砕貝殻層で構築したCB地盤は,毛管上昇遮断効果を十分に発揮し,破砕貝殻層を設けることで塩類集積の抑制・防止効果は長期に渡って発揮されることを実験的に明らかにした. 2) HYDRUS-2Dを用いた数値解析により,毛管上昇遮断効果の確認実験の再現を行った結果,実験にて破砕貝殻層によって水分上昇遮断効果が約9ヶ月間発揮され続けた結果を再現できた.また,HYDRUS-2Dの長期予測可能であることを実証した.その上で,社会実装を想定した解析期間として,30年にした場合でも水分上昇遮断効果は維持されており恒久的に機能することを明らかにした.
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