研究課題/領域番号 |
16K06488
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
早野 公敏 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (40302632)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 土質改良 / リサイクル / 有効利用 / 建設資源 |
研究実績の概要 |
建設工事で発生する泥土は,細かい粒径の土砂で水分を多く含むため,そのままでは有効利用できない.そのため,脱水したりセメントを添加したりして泥土の性質を改善することにより利用されてきたが,他の建設副産物に比較して利用率が低い.具体的な状況として,脱水処理する場合には,脱水した泥土の強度や硬さが十分でないために,利用用途が限られることが多い.一方,セメント添加で処理する場合には,現場で必要となるまでセメントを添加できず,その間,周囲を囲えるヤードで泥土を保管する必要があり,容量の制約から,製造量の柔軟性に乏しい. そこで申請者は,有効利用技術の一つとして造粒固化処理技術に着目し,2007年から研究を始めた.泥土を造粒化することにより,トラックで運搬したり,更地でストックしたりすることが可能になる.そして山砂と同様に工事間の広域なネットワークの利用が可能となることが期待された.現在,造粒固化処理技術は広く知られ,複数のプラントが建設されて,地域の建設工事で発生する泥土の再資源化に貢献している.しかしながら,造粒土の利用量は当初に期待されたほど多くない.利用量が多くない理由の一つは,造粒土の耐久性に対する懸念である. そこで本研究では固化材を効率よく混合するための泥土のほぐし材として吸水性材料を利用し,最小限の加水によって造粒土の高耐久性化を図る.本年度は泥土のほぐし材としての吸水性材料の選定を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液性限界79.6%,塑性限界42.8%,塑性指数36.8の粘性土(自然含水比71.3%)を用いて以下の試験を実施した.①土の湿潤質量1000gに対して,吸水材を5,10質量%添加.②吸水性材料は,PS灰系改良材,生石灰,石膏系改良材,早強セメントの4種類.③添加直後,2,4,8時間,1日,7日後にキッチンミキサーで1分間低速撹拌してほぐす.④③の各ほぐし作業直後に4.75mmメッシュでふるい,ふるい通過量を測定する. ふるい通過分の質量を全質量で除した値(パーセント表示)を「ほぐれ率」と定義した.上記に加え,原土のままのケースおよび早強セメントを添加し,添加直後のみ撹拌し1日養生したケースについても比較検討ケースとして実施した.結果は以下の通りである.無添加および石膏系改良材ではほぐれず,PS灰系改良材や生石灰では時間経過とともにほぐれ率が増加した.一方,早強セメントを添加したケースでは,5%添加したケースではほぐれは不十分であり,10%添加したケースでは一部固結が認められるもののほぐれることを確認した.ただし,途中でほぐし作業をしないケースでは1日経過で固結してしまった. 最後に吸水性材料の添加率を15質量%としたケースについて同様の吸水ほぐし試験を実施した.その結果は以下の通りである.PS灰系改良材を添加したケースでは,添加率15%としても,ほぐれやすい状態を長時間保っている.それに対して,生石灰を添加したケースでは,固化強度の増加が著しく,養生期間を長くしてもほぐれ率の増加は少ない.また石膏系改良材では,15%添加でもほぐれやすさの著しい改善は認められなかった.さらに早強セメントを添加したケースでは,1日の養生で完全に固結してしまった. 以上の結果から,吸水性材料としては,PS灰系改良材が好適であることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
選定した吸水性材料を泥土に混合し(吸水混合し)固化材を添加して造粒土を作製し,造粒土の粒子強度と浸漬振とうによるすり減りの評価を行うとともに,適切な加水量の分析を行う.また吸水混合を利用した造粒土の品質に,固化材の種類が及ぼす影響を調査する.具体的には固化材として普通ポルトランドセメントのほかに,高炉B種セメント,地盤改良用セメントを用いて,吸水混合による造粒土を作製する.固化材の種類が変化しても,吸水混合が成立するかどうか,そして土壌環境基準に適合するかどうかの検証を実施する
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