本研究では,豪雨時の斜面崩壊に密接に関係する斜面内浸透流について,通常の浸透流解析では無視されている物性値の空間的不均一性および間隙空気の挙動に着目し,豪雨時における斜面内の飽和度や間隙水圧・間隙空気圧の空間分布,およびそれらの時間変化について,実験的および解析的検討によってその特徴を定性的/定量的に把握することを目的としている. まず,平成28年度においてシミュレーションコードの開発と動作確認および断面2次元のモデル斜面を用いた基礎的な検討を行った.これにより,斜面の不均一性および豪雨時の間隙空気の影響について,より定量的な知見が得られることを確認した. 平成29年度においては,室内模型実験を実施し,均一斜面と一部に低透水域を設定した不均質斜面における水面形の相違を確認した.とくに不均質斜面では低透水域において顕著な水面上昇が生じることを確認した. 平成30年度は,間隙空気を考慮した気液2相流3次元数値モデルを構築し,斜面の透水性,不均一性,勾配,斜面幅および層厚と,総降雨量および降雨強度などをパラメータとして変化させ,計300ケース以上の解析結果を得た.これら多数の解析結果に基づいて,豪雨時における表面流と斜面内湧水の発生メカニズムの検討,およびそれらの定量的評価,また不均一性や間隙空気が安全率に与える影響について安定解析により検討した.これに加えて,平成30年度に発生した豪雨災害に関する情報収集を行った. 平成31年度は,おもに平成30年度中に得られた研究成果について,国内および国外において成果発表を行った.
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