関東以北に広範囲に分布する泥炭地盤は超軟弱で、この地盤上に構造物を建設すると非常に大きな沈下が長期間に渡り発生する。また供用後も長期沈下が継続的に生じ、維持補修に伴うライフサイクルコスト(LCC)の増大が大きな問題となっている。本研究の目的は、この長期沈下挙動の解明とモデル化、およびLCC低減に向けた解析アプローチである。 最終年度の2018年度に実施した研究内容・成果は次のとおりである。1)ドレーンで改良された地盤の沈下解析で必要となる水平方向透水係数を、三軸セルを用いた定水位透水試験で求め、泥炭の透水異方性についての新たな知見を得た。2)泥炭のせん断時の時間依存性挙動に関して、異方弾性を考慮することで、有効応力経路の特徴を捉えることが可能になることを明らかにした。3)ドレーン改良地盤の残留沈下に及ぼす打設間隔dの影響について、泥炭の圧密係数の圧密圧力依存性に着目し、地盤条件や荷重条件を変化させた仮想解析の結果から、残留沈下低減に必要なdの大きさを力学的に示した。 研究期間全体で実施した研究内容・成果をまとめると以下のようになる。1)泥炭の圧密・せん断時の時間依存性挙動を室内試験から明らかにした。また、既存のカムクレイモデルとIsotach型理論を核に数理モデル化し、数値解析プログラムを開発した。2)原位置データの動態解析から、粘性に起因する長期沈下と圧密係数の低下に伴う一次圧密の遅れを分離評価し、長期沈下の予測でとくに重要となる二次圧密係数の同定法を整理にした。3)上記の解析ツールと知見をもとに実地盤を解析し、その精度を実証した。また、地盤条件・施工条件を変化させた仮想解析から、対策効果が最適となる設計法を例示した。 本研究により、泥炭地盤というきわめて扱いが困難な地盤の長期挙動の合理的な説明と、力学理論に基づく効果的・効率的な維持管理が可能な解析ツールを整備できた。
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