研究実績の概要 |
2018年度は,2013年度に研究協力者とともに着手した水と土砂の流出現象の時空間スケール依存性に関する過去の研究論文の調査の結果として,これまでの研究の発展の経緯,現在の到達点,今後の課題を整理するレビュー論文にまとめたものを研究協力者とともに発表した(浅野ら, 2018a; 浅野ら, 2018b; 横尾ら, 2018). 次に,日米の合計146流域のデータを解析し,流域面積の増加に伴って主要な降雨流出過程が変化する様子をYokoo et al. (2017)の降雨流出過程の逆推定法を活用して調べた.その結果,アメリカの大流域では河川流量の逓減時定数が5時間程度となる降雨に対する応答が速い成分が観測されないものの,アメリカに比べて比較的面積の小さい日本の流域ではそれが観測されることが判明した.これにより,大陸大河川の流量変動が緩やかになるプロセスを定量的かつ客観的に記述することに成功した(横山・横尾, 2019). また,河川の断流が発生するような乾燥気候下の流域における降雨流出過程のスケール依存性を検討する予備的研究として,乾燥気候下の降雨流出過程の特性を検討した.その結果,断流が発生するような乾燥気候下の流域の主要な降雨流出過程は地表面付近で発生しており,年最小流量も年間降雨日数の影響を受けていることが分かった(Leong and Yokoo, 2019 in print).これにより,乾燥気候下での降雨流出過程のスケール依存性については,湿潤気候下の流域の議論とは分けて検討する必要があることの結論を得た.
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