| 研究課題/領域番号 |
16K06503
|
|---|
| 研究機関 | 岡山大学 |
|---|
研究代表者 |
辻本 久美子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (80557702)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
| キーワード | 水稲作付日 / 気候変動影響評価 / 食料生産量 / 水循環モデル / MODIS / GSMaP |
|---|
| 研究実績の概要 |
水循環－農業活動の動的結合モデルを用いてカンボジア，フィリピン，インドネシア，日本の各流域に適用すべく，昨年度に引き続いて，関連する情報・データの収集および数値モデルの適用と改良を行った．今年度は特に，将来的に現地行政組織や各農家が政策／意思決定に利用できるような，低計算負荷，高空間解像度な数値モデルの高度化を目指し，現業での実利用や複数流域への横展開のし易さを重点的に考慮してモデルの改良を行った．また，カンボジアにおける現地調査および現業機関との打ち合せを通して，必要なデータの追加収集を行うとともに，これまでに得られた成果について報告し，現地の水資源・農業に係る現業機関および大学研究者らと意見交換を行った．また，複数の国際会議で成果の発表を行い情報収集・意見交換を行うとともに，国際学術誌へ投稿し，成果の公表を進めた．
具体的な研究実施内容としては，上記のほか，作付日などの農事暦を人工衛星データを用いて広域推定する手法についても昨年度に引き続いて検討し，収集した現地データと比較・検証しながらアルゴリズムの改良を行った．さらに，開発したアルゴリズムに基づいて推定した過去の農事暦について，各年の降水量・降水パターンとの比較という観点から解析を行った．これらの解析を通し，降水量の年々変動が各対象地の作付日にどの程度・どのような影響を及ぼしているか，過去の傾向を整理し，とりわけ灌漑施設が未整備の途上国における水田地帯において，農家が経験知に基づいてどのような意思決定・営農管理を行っているか，考察・整理した．
また，過去の気象・降水量・農事暦データを用いて改良した水循環－農業活動の動的結合モデルによる計算・パラメータのキャリブレーションと計算結果の検証を行うとともに，温暖化シナリオに基づく将来気候予測データを入力に用いて計算するための準備を行った．
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では，研究計画の前半において水循環－農業活動の動的結合モデルを改良し，それを各流域に適用して，その計算値が過去の河川流量・水稲生産量を概ねよく再現できることを確認する必要がある．研究計画後半では，再現性が担保された数値モデル・パラメータを用いて，将来気候のもとでの適応策について検討するためである．今年度は，収集した現地情報・データや衛星データ解析結果を用いて，改良した結合モデルによる計算値の検証およびパラメータのキャリブレーションを重点的に行ったが，十分な再現性を得られるように調整する点に思いのほか時間がかかってしまい，その結果，全体の進捗としてはやや遅れる結果となった．
|
| 今後の研究の推進方策 |
本研究で高度化した水循環－農業活動動的結合モデルの各流域への適用・キャリブレーション・検証には，上記の通り，予定よりも時間がかかってしまい，補助事業期間を1年間延長させて頂いた．計算精度の検証作業について，引き続き慎重に行うとともに，本研究の最終目的である温暖化・変動する気候のもとでの農業への影響評価，および，それに関する科学知の不確実性と農家の経験知について，定量的に評価・比較検討していく予定である．
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遅れに伴い，研究成果のとりまとめ・公表（論文投稿，学会発表，関係機関への報告等）や，成果の横展開・社会実装に向けての意見交換に予定していた費用を次年度に繰り越すこととなった．次年度にこれらを実施する中で使用していく予定である．
|
