研究課題/領域番号 |
16K06513
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松永 信博 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (50157335)
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研究分担者 |
李 洪源 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (10599236) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有明海 / 河川水流動特性 / 数値シミュレーション |
研究実績の概要 |
有明海には7本の一級河川が流入しており,栄養塩の輸送,密度成層の形成,土砂輸送等,生物生息環境に大きな影響を与えている.このため,有明海における河川水の流動プロセスを明らかにすることは,環境保全の視点から極めて重要である. 本研究では,河川水の中でも有明海に最も大きな影響を与える筑後川河川水に着目し,九州北部豪雨が発生した期間である2012年7月11日~31日を解析対象期間とした.外海の沖合条件として1.2,0.8,0.4[m]の定常潮位振幅を仮想的に与え,潮受け堤防が有る場合と無い場合における有明海奥部領域からの筑後川起源水の流出プロセスや諫早湾への流入・流出プロセスを代表パラメターに基づいて検討した.その結果,潮受け堤防有無による有明海奥部からの筑後川河川水の流出率の違いは,潮位振幅が大きい場合に明瞭となり,潮受け堤防建設によって有明海奥部における海水交換率が低下する傾向が見られた.諫早湾内への筑後川起源水の流入率は,潮位振幅が小さくなるにつれ低下することがわかった.しかしながら,潮受け堤防有無による流入率の違いはほとんど認められなかった.一方,諫早湾内での代表滞留時間は潮位振幅が低下するにつれて長く傾向にあり,潮受け堤防が無い場合の代表滞留時間は,有る場合に比べて若干短くなる傾向にあった. 結論として,潮受け堤防が無い場合,有明海奥部に流入した筑後川河川水の流出率は,有る場合に比べて大きくなる.また,諫早湾内の筑後川起源水の滞留時間に関しては,潮受け堤防が無い場合の方が若干短くなる傾向が認められた.これらの解析結果から,潮受け堤防が無い場合の方が,有明海奥部領域や諫早湾領域における海水交換率は若干高くなることが推測されるが,諫早湾内における滞留時間の違いが有意であるか否かについては,今後詳細な解析が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時における本研究プロジェクトの目的として,「有明海における河川水の流動特性と栄養塩の供給・輸送・消費プロセスを現地観測によって定量的に明らかにするとともに,観測結果を十分な精度で再現できる有明海3次元流動モデルと低次生態系モデルを構築し,有明海における一次生産システムを解明すること」を掲げた.この2年間において,有明海における最も主要な河川である筑後川を対象に,河川水の流動特性を現地観測によって定量的に明らかにするとともに,観測結果を十分な精度で再現できる有明海3次元流動モデルを構築した.また,有明海に流入した筑後川河川水の奥部海域からの流出特性ならびに諫早湾への輸送,流入特性,諫早湾内での滞留特性,諫早湾からの流出特性を定量的に明らかにした.これにより,研究計画は概ね順調に進んでいると評価した
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今後の研究の推進方策 |
有明海では,2017年7月に発生した九州北部豪雨によって未曽有の大出水が生じ,大量の土砂と流木の流入を経験した.この時期における,河川水の流動特性を明らかにするとともに,土砂や流木の流動特性を明らかにする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では,当初諫早湾における底泥採取に関する現地調査を2回計画していたが,1回のみの観測で十分な研究成果を得ることができたため,次年度使用額が生じる結果となった.
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