急勾配水路の傾斜面を階段状にすることで高速流を水路上で減勢できることは直感的には理解されている.しかし,定量的な減勢量とメカニズムは必ずしも明確とは言えない.階段状水路に流入した流れは,最初は空気混入していない透明なnonaerated skimming flowとなる.さらにある程度の距離を流下した後に水面から空気混入し,白色のaerated skimming flowとなる.現在までに研究代表者らの研究によって,aerated flowの水深,流速,比エネルギーの大きさは解明された.しかしながら,nonaerated skimming flowにおける階段状水路によるエネルギー減勢効果は不明であり,nonaerated skimming flowの水深,流速,比エネルギーの大きさを予測することが水工設計上重要となっている.また,nonaerated skimming flowの水面形と乱流境界層発達状態の解析的計算法は確立されていない. 本研究課題では,nonaerated skimming flowの水深,流速,および境界層発達状態を系統的実験に基づき明らかにし,解析的に水深,乱流境界層厚,および比エネルギーを求める手法を開発することを目的にしている. 平成30年度は乱流境界層厚と水面形とを理論的に求める方程式を導出し,その境界条件の適切な取扱法を発展させることができた.境界条件の新しい取扱方法の妥当性の検討を,減勢効果の大きいことが確認されている水路傾斜角度θ=19°の階段状水路においてnonaerated skimming flowを対象にして実験を行い,水深,流速,および比エネルギーの大きさを対象に解析的に得られた値と実験値との比較を行った.その結果,θ=19°のnonaerated skimming flowの解析的計算を容易に行えるようになった.
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