研究課題/領域番号 |
16K06524
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研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
神田 佳一 明石工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (60214722)
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研究分担者 |
渡部 守義 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00390477)
中村 文則 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (70707786)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 河口砂州 / 木杭列護岸 / 生態環境機能 / 治水防災機能 / 海岸変形 / 現地観測 / 模型実験 / 数値解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,河口砂州の発達が顕著である東播磨・淡路地域の県管理小河川の河口域を対象として,現地モニタリングや模型実験及び数値解析により,間伐材を用いた木杭列水制の治水防災機能及び水生生物に対する生態環境機能を工学的に評価して,木杭列水制を用いた河口域の合理的な管理手法を構築することを目的としている.平成29年度の研究実績は以下の通りである. (1)洪水時の河口砂州の動態と木杭列水制の水理機能に関する模型実験として,現地モニタリングの結果に基づいて設定された流量条件及び河道条件のもとで,洪水時の河口砂州の変形過程及び木杭列水制を用いた河床変動制御法に関する移動床模型実験を行った (2)水浸と乾燥の繰り返しによる腐食に対する木杭の耐久性について,流水中に設置した材質や表面処理法の異なる数種の木杭材料の水分量及び針入度試験を行い,水深や流速,水浸時間をパラメータとして腐食の程度や進行速度と木杭強度の関係を明らかにした.また,実河川においても同様の現地調査を行い,腐食に対する耐久性の高い木杭材料の選定と施工方法を提案するとともに,木杭の腐食特性と魚類の生息環境の変化との関係についても考察を行った. (3)木杭列護岸周辺の流れ及び河床変動特性に関して,平成28年度に既に定式化ている沿岸域における修正ブシネスク方程式モデルと平面二次元河川流解析モデルを河川を含めた河口域に拡張し統合することによって,河口域での流れ場を対象とした数値解析モデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)洪水時の河口砂州の動態と木杭列水制の水理機能に関する模型実験では、都志川の河口域地形を模した大型移動床実験水路を用い,木杭列水制の形状及び配置方法を変化させて,洪水時の河口域の流況特性及び河床変動特性をPIV計測手法及びレーザー距離計を用いて詳細に測定した.実験結果より,河川流量及び河口水位をパラメータとした河口砂州の洪水によるフラッシュ特性を明らかにするとともに,木杭列水制による効果的かつ恒久的な砂州形状の制御法について考察した. (2)水浸と乾燥の繰り返しによる腐食に対する木杭の耐久性については,平成28年度に引き続いて、流水中に設置した材質や表面処理法の異なる数種の木杭材料の水分量及び針入度試験を継続して行った.水深や流速,水浸時間をパラメータとして腐食の程度や進行速度と木杭強度の関係を明らかにするとともに,実河川においても同様の現地調査を行い,腐食に対する耐久性の高い木杭材料の選定と木杭の腐食特性と魚類の生息環境の変化との関係について検討を行った. (3)由良川を対象とした河口砂州の発達メカニズムに関する解析では,河口部の波浪による流況が3次元的に変化している可能性があり,それを検証するために3次元空間で流況を再現できるVOF法を用いた解析モデルを導入した.このモデルは,大規模河川の河口部のような比較的広範囲を対象とするには計算負荷が大きく,既往研究において河口部の波浪計算に適用された例はないため,河口部の波浪計算への適用性の確認を行い,現有の16CPUを搭載したパソコンで計算が可能なことを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までの研究を継続して行うともに,以下の研究を行う. (1)木杭列護岸周辺の流れ及び河床変動特性に関して,河口域での流れ場を対象とした数値解析モデルを適用し,波浪による長期の河床変動予測を行う.模型実験の結果との比較から解析の再現性能を検証するとともに,合理的な木杭列水制の構造及び設置位置に関する詳細な検討を行う. (2)木杭列水制の砂州制御機能や環境水理機能の生物に対する効果,周辺河床の洗掘特性,水制の変形特性とその予測モデルの提案など個々の研究内容を定式化するとともに,平成28年度~29年度に得られた結果を基礎にして,予測モデルの現地への適用について具体的に進めていく. (3)以上の研究成果を総合して,都市域中小河川における木杭列水制による河口地形の新しい合理的な制御・管理手法を提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度では,洪水及び波浪による河口砂州の動態に関する模型実験の補助及びデータ整理に研究協力者の雇用費を計上していたが,経費節減のため予定よりも実験条件の範囲を小さく設定し,実験の項目を調整したため、研究代表者及び分担者のみでこれらの模型試験を行うことができたので,次年度の使用額が生じた. (使用計画) 次年度使用額は,平成30年度計画で引き続き行う予定の洪水及び波浪による河口砂州の動態に関する模型実験に必要な実験資材の購入や実験補助のための雇用費として使用する予定である.
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