研究課題/領域番号 |
16K06528
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
桑原 祐史 茨城大学, 広域水圏環境科学教育研究センター, 教授 (80272110)
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研究分担者 |
久世 宏明 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (00169997)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CO2濃度 / DOAS法 / 指標 |
研究実績の概要 |
本年度は、安定した観測データ取得方法の確立とCO2濃度値の解釈に関する課題に取り組んだ.各課題毎に実績を記述する. (1)安定した観測データ取得方法の確立 観測データの挙動を入念に確認した.センサの個体差(=観測地点毎)は確認されたが、半年に1回校正作業を行えば、概ね、基準ガスの計測値と整合の取れたデータ観測ができることが確認された.このため、観測後のデータ補正として、線形補正のみ施せば解析に耐えうるデータに十分になることが分かった. (2)CO2濃度の解釈に関する課題 研究計画で示した常陸大宮および阿見に観測ステーションを増設した.また、地域毎のCO2濃度変動の特長を顕在化させるために、1日の濃度変動の最大値と最小値に着目し、(濃度最大値-濃度最小値)によって1日のCO2濃度の吸収量を推定し、その値を濃度最大値で除することにより、観測地点毎のローカルなCO2吸収量を指標化した.この値と、季節毎の緑被率や地理情報(人口、道路面積、商業統計等)との関係をグラフ化することにより、①春~夏~秋については、緑被と指標に正の相関が見受けられる、②冬季は緑被との相関は高くなく、人工系の地理情報との相関が高い、③日立市および高萩市の観測データと、それ以外の茨城県内陸地域(大子、筑西、守谷、研究学園など)観測データは、同じ回帰直線には乗らない、すなわち、濃度変動のメカニズムに違いがあることが確認された.また、DOAS法による濃度変動の計測を行い、従来の観測方法(電子百葉箱内にセンサを設置した定点観測法)による計測データとほぼ同等の観測値が得られることを実験で示した(計測点間約2km).このため、平成29年度の実験は点間距離を延ばす方向で実験し、定点観測データの有効計測区間の推定について検討してゆく基準情報を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で使用しているCO2センサは、従前の製品が改良された第3世代に該当するセンサである。2014年より順次計測に取り入れてきたため、観測データの挙動が茨城県内11地点全てで明らかにされていなかったが、本年の計測により、全観測地点のデータが一同に会することになり、良好なデータが得られた事が確認できた.また、秋口の観測地点増設であったため、現時点では観測データを蓄積している段階であるが、常陸大宮および阿見の新たな観測地点でも順調に計測が進んでいる.また、DOAS法による観測では、従来の望遠鏡設置方法を変えて、近赤外光の発信と受信で望遠鏡を分ける等、ノイズとなるフリンジの影響を低減させる工夫を行った.その結果、定点観測によるデータと10ppm程度しか差の無い濃度値が、地点間距離約2kmで得られることが分かった.このため、来年度は点間距離を延ばすことに専念できることになり、次年度の研究展開に向けて有為な結論を得ることができた.以上を総合し、研究評価の区分を報告した.
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今後の研究の推進方策 |
データ観測についてはほぼ方針が確立された.新たに分かった点として、水域を近傍に持つ観測地点では、CO2吸収のメカニズムが異なることが観測データをIndex化することにより顕在化した.このため、来年度は霞ヶ浦湖畔で湖の影響を分析するために、水槽実験と実地試験を行い、湖近傍の陸上観測の計測値との比較を通して、水域におけるCO2吸収効果を立証できるよう、実験対象を増やして検討を進めて行く。 他の実験項目については当初計画通りに進める.具体的には、指標の改良、点間距離を広げる方向でのDOAS法による点間CO2濃度計測の実施、そして季節別のCO2濃度データの意味付けを深めて行くこと、以上である.
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次年度使用額が生じた理由 |
観測データを取得するために設置しているセンサを内蔵するための電子百葉箱の更新が複数個所で必要と考えていたが、メンテナンスに回った結果、緊急性は認められなかった.また、通信カードの増設は作業量の関係から見送った.このため、百葉箱作成作業支援の費用や通信費の支出が無かったことが残額が生じた主な理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、上記観測データ取得作業について、積極的に取り組む.具体的には、快く作業を支援してくれる学生を募り、電子百葉箱を作成し、研究成果のPRもかねて設置作業までの支援を得たり、データ観測の欠損をいち早く見つけるために通信カードの増設を行う.また、霞ヶ浦周辺で水域効果を測る実験を新たに追加する.施設は既存の環境利用で十分であるが、指標するセンサを標準ガスを用いて校正する作業は結果の良否を左右する重要なポイントであり、そこに費用の一部を使用する.
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