最終年度では、次のような研究成果が得られた。まず、観測リンク数の変化が時間変動係数逆推定手法の精度に与える影響分析を行った。観測リンク数395個所の25変数モデルを基本モデルをとして、観測リンク数を無作為に40個所づつ減少させていきRMS誤差の変化をみた。結果、車種や経路ごとに異なる傾向があったが基本モデルから160箇所までの減少であれば精度が維持されて,時間変動パターンにも大きな変化はなかった.しかしそれ以上観測リンク数を減少させると精度の悪化や収束不良となることが分かった。次に、24時間全体で20時間程度かかっている計算時間の効率化について検討した。本モデルにおいて多く時間がかかって時間帯別均衡配分モデルの計算において、並列計算を考慮することで、1時間当たり1/4程度に計算時間を抑えることができることがわかり、これを24時間で適用すれば大きな時間短縮につながることが分かった。最後に研究を進める過程で新たに課題として出てきた、少ないODペアで生じている過剰な時間変動パターンの制御理論の検討を行った。ゾーニングの数を増やしていくと、OD交通量の少ないペアで過剰ともいえるジグザグの時間変動パターンが出力されることがわかったが、これを抑制する目的関数を新たに付け加えて分析した結果、時間変動パターンの過剰変動を抑えることができることが分かった。しかし一方であまり抑えしすぎると本来の時間変動パターンの特性を壊してしまうことから時間変動パターンをどのように推計すれば実際的に適合性が高いかなどが今後の研究課題として挙げられた。 研究機関全体を通して、上記のものも含めて、地域別方向別のゾーニングで区分けして、さらに都市圏域外からのOD交通量も含めて全体として時間帯別OD交通量を精度よく推定できる時間変動係数逆推定モデルの実用化を進めることができた。
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