研究課題/領域番号 |
16K06536
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 弘司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362320)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 交通安全 / 生活道路 / 交通静穏化 / 二段階横断施設 / 道路狭さく / 歩行者 / 車両挙動 / ラウンドアバウト |
研究実績の概要 |
以下について,本年度は研究活動を実施した. 「(1)面的交通対策を検討するための欧州の道路設計思想や運用にかかる技術指針の特徴を整理し,各種安全施設(ミニラウンドアバウト,二段階横断施設等)の運用実態や効果を,国内外調査により明らかにすること」に対して,フィンランド,オーストラリア2か国において各種安全施設の設置状況を確認する現地踏査を行った.フィンランドでは,ヘルシンキ市において,郊外部から集落へ土地利用が変化する箇所に対してラウンドアバウトを設置し,併せて規制速度を時速30kmへ低下する対策が取り入れられていること,また,オーストラリアでは,シドニー市内の住宅地内において連続的にラウンドアバウトを設置することで,住宅地内の走行速度を抑制する対策が取り入れられていることを,簡易な走行調査に基づき確認した.一方,わが国において現地調査により二段階横断施設の設置効果について検証を行った.具体的には愛知県内2か所,宮崎県内1か所の無信号横断歩道における二段階横断施設において,歩行者心的負担の分析および車両の譲り行動に関する統計モデリングを行い,二段階横断施設における利用者負担の軽減ならびに車両の譲り割合の増加要因を明らかにした. 「(2)生活道路を抜け道とする自動車利用者の経路選択意識を,実際のフィールドおよび室内実験により調査し,道路ネットワーク,道路構造,交通制御,各種安全施設の設置状況との関連を明らかにすること」については,名古屋市天白区植田東学区連絡協議会の交通部会に参画し,研究を進める準備を進めた.具体的には,当該地域に連続的に設置される速度抑制対策としての道路狭さくの設置位置および間隔に関して,映像解析に基づく速度抑制効果のある狭さく設置間隔についての技術的知見をまとめ,その上で道路管理者,地域住民との協議を行うことで,実現可能な安全施策案を明らかにし,実施工に導いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度実施を計画した2点について 「(1)面的交通対策を検討するための欧州の道路設計思想や運用にかかる技術指針の特徴を整理し,各種安全施設の運用実態や効果を,国内外の調査により,明らかにすること」について,十分な文献調査や海外協力者と連携した観測データの取得まで行うことはできていない.しかしながら,海外での現地踏査による安全施設設置・導入状況の確認ならびに国内の安全施設に関する実態調査を行えていることから,面的な交通対策を検討する上での基礎的な知見は得られたものと思われる. 「(2)生活道路を抜け道とする自動車利用者の経路選択意識を,実際のフィールドおよび室内実験により調査し,道路ネットワーク,道路構造,交通制御,各種安全施設の設置状況との関連を明らかにすること」については,分析対象エリアを選定し,当該エリアにおける基礎的な交通状況や住民意識に関する情報収集を行うことができており,また,安全施設設置に関して地域住民ならびに道路管理者等と一体となった取り組みを行い,実際に本年度道路狭さく設置まで至っていることから,次年度に上記に関する調査分析を行う準備が整った状況にある.
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今後の研究の推進方策 |
まず,前年度実施できなかった部分に関して,欧州の道路設計思想・交通運用に関する技術指針の資料収集を実施する. 次に,名古屋市天白区植田東学区を対象として,自動車利用者の経路選択意識調査および室内実験を実施する.想定されるネットワーク,道路構造,交通制御,各種安全施設の設置状況等の要因を考慮したドライブシミュレータを用いた実験を企画し,経路選択意識と道路特性・交通状況との関連性を分析可能なデータを取得する.そのデータを統計処理し,自動車の経路選択行動に関する非集計モデルを構築する.自転車,歩行者の経路選択行動については意識調査によりデータ取得を試みる. 続いて,幹線道路で囲まれた生活道路を含む市街地道路ネットワークの潜在的な事故リスクを計量する.そのため,①生活道路と幹線道路を結ぶ交差点,②生活道路内無信号交差点,③生活道路内信号交差点,④生活道路内単路部のネットワーク構成要素毎に事故リスク計量モデルを構築する.愛知県内の事故多発箇所の集中する地域に対して,地域,沿道立地特性を考慮して,クラスター分析により類似する事故多発箇所を選定する.特に,高齢者関係事故に着目し,影響要因を明らかにする.上記で整理した事故多発箇所について,①~④の構成要素,各々に対して数か所を選定した現地踏査を行うことで,詳細な利用状況データを取得する.各構成要素における潜在的事故リスクは,(i)危険事象発生頻度を確率分布で表現し,(ii)危険事象強度を安全性評価指標で表現し,その(i),(ii)の積で定義する.取得したデータをもとに,確率分布パラメータを推定し,また,安全性評価指標への影響要因を統計解析手法で明らかにする. 以上より,MOE(Measures of Effectiveness)指標に基づいた効率的な道路配置・安全施設の設置方法及び信号制御を含めた交通運用方法の検討を行う準備を整える.
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