研究課題/領域番号 |
16K06536
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 弘司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362320)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 交通安全 / 生活道路 / 交通静穏化 / 二段階横断施設 / ラウンドアバウト / 歩行者 / 自転車 |
研究実績の概要 |
以下について,本年度は研究活動を実施した. 「(1)面的交通対策を検討するための各種安全施設の運用実態や効果」に対して,前年度の調査結果にもとづき,わが国における簡易な二段階横断施設における利用者負担の軽減ならびに車両の譲り割合の増加要因に関する研究論文を執筆した.また,観測調査に基づき,横断歩行者の挙手により譲り車両の割合が増加するなどソフト面での安全対策効果についても実証した.他方,ラウンドアバウトにおける走行調査を実施し,環道内自転車と自動車の通行安全性を高めるためには,環道流入時の両者の速度差を小さくし,段差のあるエプロンにより自動車が自転車を追越さないような構造面での対処が有効であることを示した. 「(2)生活道路を抜け道とする自動車利用者の経路選択意識に関する分析」について,前年度の研究成果を踏まえて道路狭さくが設置された名古屋市天白区植田東学区住民を対象としてアンケート調査を行い,道路狭さく設置区間の近隣住民は経路変更の意識が低いこと,道路狭さくによって安全性が低下したと感じる住民は経路変更の意識が高いことを明らかにした. (1),(2)に関連した取り組みとして,長野県飯田市の協力を得て,中央帯の閉鎖や中央帯を活用した二段階横断施設の検討を実証するための社会実験を行い,実フィールドにおける面的交通対策の検討や生活道路抜け道利用を抑制するための対策に関して分析を行う準備を整えた. 「(3)市街地道路ネットワークの潜在的事故リスクの計量方法に関する研究」について,愛知県名古屋市内で発生した交通事故統計データを用いて,道路幅員と規制速度の関係について集計分析し,広幅員道路では規制速度によらず発生した事故類型に大きな違いが見られず,一方,狭幅員道路では規制速度によって発生した事故類型に違いがみられることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度実施を計画した内容について, 「(1)面的交通対策を検討するための各種安全施設の運用実態や効果」に対する前年度からの課題に関しては,学術論文に成果をまとめるなど,概ね順調に研究が進められたといえる.「(2)生活道路を抜け道とする自動車利用者の経路選択意識に関する分析」についても,前年度の研究成果を踏まえて実態調査を行い,経路選択意識に関する統計モデルの構築を行えているが,通過交通の多くを占める地域外利用者に対する調査が不十分であるため,その点について検討を進める必要がある. 「(3)市街地道路ネットワークの潜在的事故リスクの計量方法に関する研究」について,事故発生状況をGISデータベースとして整備し,その他沿道条件や既存安全対策との関係性などの空間的な分析を行う準備を整えられたものの,詳細な分析は進められておらず,急ぎ検討が必要である. 「(4)MOE(Measures of Effectiveness)指標に基づいた効率的な道路配置・安全施設の設置方法及び信号制御を含めた交通運用方法の検討」を行う点については,長野県飯田市の協力を得て,中央帯の閉鎖や中央帯を活用した二段階横断施設の検討を実証するための社会実験を行い,実フィールドにおける面的交通対策の検討や生活道路抜け道利用を抑制するための対策に関してケーススタディ分析を行う準備を整えることができた.
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今後の研究の推進方策 |
過年度の取り組みがやや不十分である欧州の道路設計思想・交通運用に関する技術指針の文献調査を追加で実施する.次に,地域住民以外の抜け道利用の要因を明らかにするため,自動車利用者の経路選択意識調査およびドライビングシミュレータを用いた室内実験を実施し自動車の経路選択行動に関する統計モデルを構築する. 続いて,幹線道路で囲まれた生活道路を含む市街地道路ネットワークの潜在的な事故リスクを計量するため空間的な分析を行う.そのため,①生活道路と幹線道路を結ぶ交差点,②生活道路内無信号交差点,③生活道路内信号交差点,④生活道路内単路部のネットワーク構成要素毎に事故リスク計量モデルを構築する. 幹線道路に囲まれた生活道路を含むネットワークに対して,利用者の被る遅れ,事故リスク,利用者快適性などを総合的に評価できるサービス水準評価尺度である空間的なMOE指標(Spatial MOE)を考案する.そのうえで,交通流シミュレータを用いて,同ネットワークに対して,効率的な道路配置・安全施設の設置方法,交通運用方法を検討する. 具体的には,幹線系道路の対策について,二段階横断施設を単路に複数設置し,主要交差点の信号サイクル長の短縮により利用者が被る遅れがどのように減少するか,また同時に生活道路を抜け道とする経路選択者がどの程度減少するかの効果を明らかにする.また,生活道路の抜け道利用者を減少させるための対策として,狭さくによる速度抑制デバイスの設置,一方通行規制等の制御方式の変更,袋小路の設置などによる道路配置の変更などを行う.これらのケーススタディとして,前年度に各種データ取得を試みた長野県飯田市の道路ネットワークを対象として分析を行う.
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