研究課題/領域番号 |
16K06541
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
羽鳥 剛史 愛媛大学, 社会共創学部, 准教授 (30422992)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタ無知 / リスクガバナンス / 災害想定 |
研究実績の概要 |
認知心理学のメタ認知理論を踏まえて、災害想定に関わるメタ無知の心理機構を実証的に検討した。具体的には、人々がどのような想定意識を有し、その想定をどのように評価しているかを調べて、メタ無知の傾向を実証的に検討した。その上で、洪水災害を対象としてメタ無知を緩和するためのハザードマップの提示方法について検討した。そこで、洪水ハザードマップの提示に加えて、その前提条件に関する内省機会を付加した内省機会付加型ハザードマップを提案し、愛媛県大洲市肱川周辺住民605名を対象として、本ハザードマップの効果を検証した。その結果、内省機会付加型ハザードマップを閲覧することにより、通常のハザードマップを閲覧するよりも、洪水災害に関わる想定外の事態に対する認識が向上し、メタ無知が緩和される効果が確認された。 また、有珠山噴火の事例を踏まえて、災害リスクガバナンスのあり方について規範的な分析を行った。災害リスクガバナンスの問題が災害ステージの時間的展開に応じて変化することを指摘し、各ステージの意思決定問題について検討した。さらに、危機管理に関わる意思決定モードとして、通常時と非常時の2つの意思決定モードについてその特徴を考察した。その上で、災害ステージの展開に対応して意思決定モードを変更するための高次の意思決定原則(メタ原則)について検討し、メタ原則の下、危機管理に関わる討議システムを基盤として意思決定モードの選択を正統化するための規範的枠組みを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害想定に関わるメタ認知やメタ無知の心理機構について理論的・実証的な検討を行うと共に、メタ無知の解消に向けた処方策の効果検証についても、一定の成果を上げることが出来た。それと共に、災害リスクガバナンスの規範分析についても行うことが出来た。これらの成果については、一部、論文としても投稿し公開されたことから、概ね順調に研究を進めることが出来たと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
各種のリスクコミュニケーションを通じて、災害想定に関わるメタ無知を緩和する変容学習の条件を探る。具体的には、実験協力者を複数のグループに分けて、各グループに対して、異なる種類や条件のリスクコミュニケーションを実施し、実験協力者のメタ認知がどのように変化するかを計測する。その際、自己の災害想定に対する内省機会の導入効果を検証する。
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