研究課題
災害想定に関わるメタ無知と防災行動との関連性について実験的な検討を行った。南海トラフ巨大地震に関わる被害想定を超える事態について内省することによって、メタ無知がどのように緩和されるかを調べると共に、災害準備行動への影響についても検討した。具体的には、実験協力者(n=110)を2グループに分けて、一方のグループ(想定内グループ)には、政府が公表している被害想定(震度、建物崩壊、建物焼失、人的被害、上水道被害、下水道被害、電力被害、避難者数、物資不足)をそのまま閲覧してもらい、もう一方のグループ(想定外グループ)には、その被害想定を超える事態について考えてもらう操作を施した。そして、地震被害に関する理解度や防災意識等について実験前後の変化を2グループ間で比較検証した。併せて、実験後、実験協力への謝礼という名目で図書カードか備蓄品を選んでもらい、災害準備行動の選択傾向を調べた。その結果、両グループの間で地震被害に関する理解度については有意な相違点は認められなかったものの、想定外グループでは、想定内グループに比べて、防災行動への意識が有意に向上すると共に、実際に災害準備行動(備蓄品の選択)を採る傾向が高い効果が認められた。以上の結果より、被害想定を国民に周知する際には、その想定情報を伝達するだけでなく、その想定を超える事態についても想像してもらう働きかけを併せて行うことの重要性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
メタ無知を緩和するためのリスクコミュニケーションの効果を明らかにすることが出来、当初予定していた課題について概ね順調に取り組むことが出来た。
昨年度の研究成果を踏まえて、現実の地域社会を対象としたリスクコミュニケーションの簡易実験を行う。それと共に、これまでの結果を整理し、メタ無知の緩和という観点から、リスクガバナンスのあり方についての総合考察を行う。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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