本研究は、2011年3月に発生した東日本大震災被災地を対象に、次の3つを目的に研究を進めた。1)自治体資料、現地調査によりインフラの復旧実態・稼働実態の時系列変化を把握する。2)アンケート調査を実施し主観的復興実感度を把握し、客観的指標との関連を把握する。3)復興・稼働実態、復興実感度を含む生活質評価モデルを構築し、復旧・復興計画を評価する。 本研究では、復旧はインフラの「復旧実態」と捉え、復興はインフラの「稼働実態(道路であれば交通、住宅であれば居住)」と捉え、これらは客観的指標として把握できると考える。市民はこれら客観的な情報に基づき主観的指標「復興実感度」を形成し、それが市民の生活質の満足度評価(以下、生活質評価)や居住意向に影響していると考える。 研究対象地域は、最大の人的被害のあった市町村である宮城県石巻市とした。アンケート調査は、石巻市の仮設住宅の居住世帯の代表者を対象に実施した。 研究の結果、以下が明らかになった。1)被災地で進めている復旧・復興の状況を把握した結果、社会基盤施設の種類によって復旧状況が異なること、人口減少社会においては社会基盤施設が稼働しても、大震災前の水準まで復興することはないことがわかった。 2)石巻市の仮設住宅に居住する世帯を対象にアンケート調査を実施し、復興実感度と生活質評価の基礎特性を把握した。復興実感度については、交通関係の実感度が高い一方、個人住宅、余暇機会、働く場の確保に関する実感度が低いことがわかった。 3)復興実感度の評価結果から因子を抽出し、社会基盤復興(地場産業の回復、働く場の確保等)、生活基盤復興(住宅の確保等)、交通基盤復興の3つの因子を抽出した。その結果から3つの実感度を高めるための世帯属性、大震災前の居住地の特性を把握した。
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