本研究は,図面情報を現地で直接投影して橋梁の変位計測を行える技術開発を目的としている.その開発の核は,図面情報を現地で同じ位置に投影させるための,再帰的な位置計算アルゴリズムの構築である.ノートパソコンの画面に表示した図面を,プロジェクターにて複製して,現地で投影する.投影にあたって,図面には投影座標系(平面直角座標系)による座標情報を付加しておく.プロジェクターの位置は,GNSSによって取得することを前提とし,図面と同様に投影座標系(平面直角座標系)で扱う.そのため,プロジェクターの投影における幾何学的特性が分かっていれば,プロジェクターの投影位置を算出可能である.図面情報の可視化は,OpenGLを使用した.最終的に,図面と現地投影でのプロジェクター位置,ならびに投影像の位置関係を示す一般式を導出した. これによって,例えば,先行技術であるTS(トータルステーション)を利用した端点計測による手法に対して,現地で全体を直接投影して構造物の変位を一目で把握する,新たな変位計測法の実用化へ繋げられる点で意義がある.特に,わが国では,土木構造物の老朽化が顕在化しており,この技術が維持管理において重要性を有すものと考える.また,GNSSを含めICTを利用しており,昨今,土木分野のトレンドであるCIMやi-Constructionに即した技術がベースとなっており,これらの施策を成功に導くツールの一つとなりうる点でも重要性を有している.
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