研究課題/領域番号 |
16K06550
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
辻井 利昭 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主幹研究開発員 (60344256)
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研究分担者 |
成岡 優 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (10649073)
藤原 健 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (40358651)
清水 悠介 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (60773942)
吉川 栄一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (70619395)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | GNSS(衛星航法) / INS(慣性航法装置) / アレーアンテナ / マルチパス / ソフトウエア受信機 / 電波干渉 |
研究実績の概要 |
本研究では、劣悪な電波環境において脆弱なGNSS航法システムをロバスト化するため、電波に依らない慣性航法装置(INS)と複合すると共に、複数アンテナによって衛星の選択/排除機能を備えた航法技術の開発を目的とする。本年度は、 (1)市販のGNSSアンテナによりアレーアンテナを構成し、個々のアンテナの配置を理論計算により検討した。 (2)各アンテナからのの信号をコンバイナにより混合し、市販のGNSS受信機に結合した実験システムを構築した。 (3)理想的な環境で実験を行い、GNSS観測データの評価を行った。まず、2アンテナ・システムで固定点での1日観測を行い、信号強度の変動を評価した。衛星の運動によりほぼ全天での信号強度が得られるため、アレーアンテナの指向性が明確に「みえる化」され、理論予測と整合することを確認できた。また、アレーアンテナを回転台にのせて一周させ、同一の衛星の信号強度の変動を評価した結果、方位角による信号強度の変動が見られ、指向性を理論通りに付与できることが確認できた。 (4)さらに、共通の外部クロックに接続した2台の受信機に、1個のアンテナからの信号をスプリッタにより分配した信号を入力して、受信機間のハードウエアバイアスを評価した。受信機のOn/Offを行っても疑似距離バイアスは保存され、事前のキャリブレーションを行うことにより受信機の同期が取れることが確認できた。 これらの結果により、来年度より、市販受信機をRFフロントエンドに置き換えて、ソフトウエア受信技術を用いてアレーアンテナの信号を扱う準備が出来たと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ソフトウエア無線技術を適用するため、アレーアンテナの個々の出力を複数の市販RFフロントエンド(FE)に接続する計画であった。まず既存のFEに接続してデータ解析を進めていたが、FEに不具合があり中間周波数(IF)データが適切に記録出来ないことが判明した。メーカに問い合わせた結果、内部クロックの安定度が要因の一つと考えられ、改良型の開発を行っている状況であった。改良型はH28年度内には完成しない見込のため、FEとソフトウエア受信機を使った研究は来年度に延期し、コンバイナを使ってハードウエア的に複数アンテナ信号を混合することで、指向性確認の検討を進めた。その結果、アレーアンテナの指向性は理論予測と整合しており、来年度からはソフトウエア受信機を使った研究が進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
改良型のRFフロントエンドを調達し、アレーアンテナからの信号をソフトウエアにより重み付けして混合する。まず、本年度と同様の実験(固定点による1日観測、回転台を用いた動的観測)を行い、ハードウエアによる信号の混合と同等の結果が得られることを確認する。 次に、アンテナを3台に拡張し、指向性調整アルゴリズムの研究開発を行う。本研究期間では、耐マルチパスに主眼を置き、直接波方向に指向するビーム・フォーミングを開発する。 また、ビルの谷間などマルチパス環境で最適な航法解を得るため、信号の質を評価する信号品質モニタを開発し、全体性能が悪化するような衛星を排除するアルゴリズムを開発する。 最終的には、ローコストINSを複合して、移動体の姿勢角を指向性調整アルゴリズムで使用できるようにする。また、ドップラ周波数の推定により、GNSS信号の積分時間の長期化を行い、時間的複合技術と複合する。ローコストINSは計測ノイズが航空用リングレーザジャイロに比べて格段に大きいため、ノイズ平滑化や、センサ誤差の推定アルゴリズムの改良を行う。様々な実マルチパス環境で移動体による計測実験を実施し、システムの性能評価および改修・改良を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、ソフトウエア無線技術を適用するため、アレーアンテナの個々の出力を複数の市販RFフロントエンド(FE)に接続する計画であった。まず既存のFEに接続してデータ解析を進めていたが、FEに不具合があり中間周波数(IF)データが適切に記録出来ないことが判明した。 そのため、改修したFEの調達が必要となったが、H28年度内には調達できない見込のため、FEとソフトウエア受信機を使った研究は来年度に延期することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
改良型のRFフロントエンドを調達する。また、アンテナを3台に拡張し、指向性調整アルゴリズムの研究開発を行う。実験の結果が妥当であれば、高精度化を目指してFEとアンテナの追加調達を検討する。
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