研究課題/領域番号 |
16K06551
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村尾 直人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00190869)
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研究分担者 |
安成 哲平 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70506782)
山形 定 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80220242)
深澤 達矢 北海道大学, 工学研究院, 助教 (80292051)
山口 高志 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部環境科学研究センター, 研究主任 (90462316)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PM2.5 / 微小粒子状物質 / 越境汚染割合 / センサー / 個人曝露 |
研究実績の概要 |
本研究は、微小粒子状物質(PM2.5)汚染による健康影響を正確に把握し、適切な対策の立案を行ってゆくため、小型個人曝露測定装置の開発・実用化と測定に基づく越境汚染割合の新評価手法の確立に取り組むものである。初年度にあたる平成28年度には、個人曝露測定センサの試作と較正を行なうとともに、越境汚染割合の評価に向けた東京都での観測を開始した。以下にその概要を述べる。
1.個人曝露測定センサの試作と較正:使用するPPD60PVセンサーについて、空気吸引法の変更、使用するファンの選定等を行い、最終的に、146×106×56mmのプラスチック製の箱内に、センサー、充電池、データーロガー等を収めた個人曝露測定装置を試作した。装置は総重量約550gで、32時間の連続測定ができる。また、PPD60PVセンサーとPM2.5自動測定機による同時測定を、北海道環境科学研究センター屋上で約2ヶ月間行った。その結果、PM2.5測定値とセンサー出力値(日平均値)の間に良好な直線関係を得た。その関係を用いて、センサー出力値をPM2.5濃度に変換できる。 2.越境汚染評価のための東京での観測:申請者らが開発した「観測に基づいて都市汚染と越境汚染を分離する手法」を、関東地方に適用するため、東京農工大学松田和秀准教授の協力を得て、東京都八王子市堀之内にあるFM多摩丘陵の大気観測鉄塔高度25mに、機器を設置し、観測を開始した。観測は、分担者の山形が開発したテープ式吸収率計でPM2.5の光学的吸収係数、申請者らが開発と評価を行ったセンサーで0.5μm 以上の粒径を持つ粒子個数濃度をそれぞれ測定するものである。両者の比はPM2.5粒子1個あたりの光吸収性を表し、越境汚染を判断する指標となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に予定した、1) 個人曝露測定センサの試作と較正、(2)越境汚染割合の評価のための東京都での観測について、以下にその達成状況をまとめる。
1) 個人曝露測定センサの試作と較正:様々な検討を行い、個人曝露測定装置を試作した。被験者の負担を考慮し、数百グラムまでの重量での作成と24時間以上の稼働を目指したが、試作装置は、総重量約550g、32時間の連続測定が可能なもので、当初の目標を達成できた。また、北海道環境科学センターの協力を得て、二カ月間にわたり、センサーとPM2.5自動測定機との同時測定を行い、PM2.5測定値とセンサーの出力値の間に良好な直線関係を得た。すなわち、個人曝露測定センサの試作と較正の目標は達成できた。 2) 越境汚染評価のための東京での観測:札幌市の越境汚染について良好な評価結果を得た手法を、PM2.5濃度の高い関東地域に適用するため、東京都八王子市堀之内にあるFM多摩丘陵の大気観測鉄塔高度25mに、機器を設置し、観測を開始した。今後2年にわたって観測を続けることになるが、これまで順調にデータ取得が行なえている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 個人曝露測定装置のさらなる改良:以下の3点の改良を計る。①機器を納める箱を変更して軽量化(被験者の負担軽減)、②通信機器で測定値をクラウドに送信(解析者の負担軽減)、③コスト削減
2) センサー観測を用いた越境汚染割合の評価:関東地域での観測を継続するとともに、その結果を検討し、PM2.5の越境汚染の影響が大きい、九州での観測を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
節約に努めた結果、14,865円の繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した費用については、今年度に予定されている追加測定地点で使用するデータ通信のための機器購入費用とする予定である。
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