研究課題/領域番号 |
16K06552
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日高 平 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30346093)
|
研究分担者 |
西村 文武 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60283636)
佐野 修司 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食の安全研究部及び水産研究部), その他部局等, 主任研究員 (00443523)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | メタン発酵 / 小規模生活排水処理施設 / 脱水汚泥 / 好気性消化 / 液肥 / 草本作物 |
研究実績の概要 |
小規模下水処理施設での分解しにくい余剰汚泥の例として、オキシデーションディッチ法からの脱水汚泥を対象にした嫌気性消化実験を、中温(35℃)条件下で継続して行った。投入固形物(TS)濃度の影響を比較したところ、10%および5%いずれの場合も、投入有機物(VS)あたりのバイオガス発生率は0.3 NL/gVS-added程度と同等であった。ただし粘度は10%の場合が10倍以上高く、かくはん効率への影響が懸念された。そして得られた嫌気性消化汚泥の液肥利用によるエネルギー生産として、草本作物の栽培を試みた。栽培した草本作物の性状を分析したところ、有機物含有率の指標であるVS/TS比は0.85、Dry Solids(DS)に対する元素含有率は、炭素が37%、水素が5.3%、窒素が1.0%、リンが0.7%、硫黄が0.7%で、高位発熱量は16.6 kJ/gDSであった。過去に行われた河川や道路などの公共緑地で採取した草木バイオマスの成分調査結果と比較して、概ねばらつきの範囲内に収まっていた。草本作物の下水汚泥との混合嫌気性消化特性を議論する上で、刈草の嫌気性消化で蓄積しているこれまでの知見が活用できると考えられた。 嫌気性消化で分解されにくい汚泥中の有機性成分の挙動を比較することを目的に、回分式での好気性消化実験も継続して行った。脱水汚泥の乾燥を防ぐため、定期的に水分を添加し、30℃条件を維持した。消化汚泥のVS/TS比は、嫌気性消化の連続式実験で0.7程度だったのに対して、好気性消化では400日目で0.6程度まで低下した。VS分解率は、嫌気性消化で0.4程度であったのに対して、好気性消化で0.6以上に達した。いずれも好気処理開始の最初の100日程度までで分解が一段落し、その後の分解速度は遅かった。可溶化処理などを組み込まない限り、これ以上の生物学的分解は難しいと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オキシデーションディッチ法からの脱水汚泥を対象に嫌気性消化および好気性消化の連続式実験を行い、長期的な安定運転を達成し、得られた嫌気性消化汚泥を用いた草本作物栽培も行い、エネルギー生産の可能性を計画通り提示できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
栽培した草本作物を投入する混合嫌気性消化実験を行いバイオガス発生率などからエネルギー回収量を把握し、一連のシステム全体について、下水処理場におけるエネルギー収支を評価し、現場への導入手法を提示する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度予算としてはほぼ予定通りであった。 (使用計画) より詳細な分析を実施予定。
|