研究課題/領域番号 |
16K06553
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
関川 貴寛 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (20511728)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | クリプトスポリジウム / 界面活性剤抽出処理 / 熱応答性高分子 / 磁性ナノ粒子 / 免疫磁気分離 / 核酸抽出 / リアルタイムPCR / オーシスト |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに界面活性剤のみを用いてクリプトスポリジウムのオーシストから核酸を抽出する界面活性剤抽出処理(Surfactant extraction treatment: SET)法を確立している。平成28年度は、アビジンが結合している熱応答性磁性ナノ粒子(Thermoresponsive magnetic nanoparticle: TMNP)とCryptosporidium parvumに特異的なビオチン化モノクローナル抗体を用いてオーシスト回収用の熱応答性免疫磁性ナノ粒子(Thermoresponsive immunomagnetic nanoparticle: TIMNP)を作製し、オーシストの回収およびリアルタイムPCR法によるDNAの検出感度を評価した。DNAテンプレートを用いてTIMNPによるPCR増幅阻害を評価した結果、TIMNP(4mg/mL)の添加濃度0.5%でPCRを阻害した。しかし、その阻害は非イオン界面活性剤Tween20を添加することによって抑制できることが明らかになった。また、TIMNPとSETを併用したオーシストからのC. paruvum DNAの検出条件を検討した。オーシストDNAの検出には、クリプトスポリジウム18S rDNAに特異的なプライマーセットとTaqManプローブを用いた。オーシストが結合しているTIMNPを含む試料水に陰イオン界面活性剤SDS(終濃度0.1%)を添加した後、加熱処理(90℃、15分間)で核酸を抽出し、加熱処理後のTIMNPがリアルタイムPCRに及ぼす影響を評価した結果、TIMNP存在下でもTween20の添加によってPCR阻害が抑制され、18S rDNAを検出できることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりに研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
我々は平成28年度に熱応答性磁性ナノ粒子(Thermoresponsive magnetic nanoparticle: TMNP)とCryptosporidium parvumに特異的なモノクローナル抗体を用いて熱応答性免疫磁性ナノ粒子(Thermoresponsive immunomagnetic nanoparticle: TIMNP)を作製し、オーシストの回収およびDNAの検出を行った。今後はこれまでの知見を活用して、mRNA回収用のTMNPを作製する。mRNA回収用TMNPは、アビジン化したTMNPとビオチン化オリゴ(dT)を結合させて作製する。 平成29年度は、オーシストから核酸(DNA/RNA)を抽出し、核酸抽出液からmRNA回収用TMNPを用いてヒートショックタンパク質(HSP)遺伝子由来mRNAの分離濃縮条件を検討する。凍結融解処理と核酸精製キット(DNeasy Blood & Tissue Kit,Qiagen社)を用いてオーシストから回収された核酸を陽性対照とし、クリプトスポリジウムHSP70遺伝子由来mRNAに特異的なプライマーセットとTaqManプローブを用いてReverse transcription-qPCR(RT-qPCR)法で行う。mRNA分離濃縮における性能評価の比較対照として、市販のmRNA精製用磁気ビーズ(Dynabeads Oligo (dT)25, Thermo Fisher Scientific社)を使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に購入した核酸増幅関連試薬の一部を今年度に使用することができたため、今年度使用額は予定よりも少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
補助事業の目的をより精緻に達成するための追加実験の実施や学会参加、論文投稿に使用する予定である。
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